もてる男より外野の方が辛い



「土方さんの事は諦めなせェ、山崎」
「…隊長、?」

夜中、屯所の裏庭に呼び出され沖田隊長が放った第一声がこれだった。
隊長には副長の事が好きだと言ってないはずなのに、と動揺していると二つ目の言葉が放たれる。

「土方さんに山崎が釣り合うとでも思ったのかィ?‥笑わせんな。土方さんの横には俺って決ってるんですぜィ」
「そんな‥っ、そんな事思ってません‥!大体俺は副長の事なんか‥!」
「土方さんなんかなんでィ?嫌いとでも言い出すつもりですかィ?そんな訳ないだろィ、好きなんだろ?好き過ぎてどうしようもないんだろィ?言ってみろよ、好きだって。なァ?山崎退」

全てを見透かされたように鼻で笑われて、腹が立った。ついでに、涙も出た。
ぼろぼろと涙を溢しながら、ぐしゃぐしゃになった顔で叫んでやった。真夜中なんて関係ない。
だって、俺が土方副長を好きである事に変わりは無いのだから。

「…‥ッき、…好きですよ、好きで何が悪いんですか?!」
「悪いね、迷惑でィ。ただでさえお前は副長直属の監察なのに」
「‥そんな事今関係ないじゃないですか…上が決めた事なんですから‥ッ」
「それが関係あるんでィ。この事によって、お前は土方さんに嫌でも近付けるからなァ。生憎俺ァ、こんな性格なもんで土方さんに怒鳴られる事しか出来ねェ‥。マジでお前が憎いんでさァ」
「……ッ、!」

ダンッ、と胸ぐらを掴まれて地面に叩き付けられる。
転んだ俺の上に隊長が馬乗りになる。殺されんのかな、俺‥
副長の役に、まだ全然立ってないのに‥。
と、ふいに俺の頬に落ちる一滴の雫。
暗くて顔はよく見えないけれど…もしかして隊長、泣いてるのか‥?

「山崎‥俺ァ…ッ、俺ァ、素直に、…なりてェよ…ッ」

ぽた、ぽた、かすれた、喉から絞り出すような声で必死に言葉を紡ぎながら、沖田隊長は泣いていた。
初めてみた、隊長の泣き顔。
本気で土方さんが好きだとぶつけてきて、自分の今までの生き方に酷く後悔して泣いていた。
でも俺だって。…負けないんだから、副長に対しての想いは。

「素直になったらいいじゃないですか。それだけの話です。‥隊長、俺負けませんからね。絶対」
「…へッ、今日の山崎はよく喋るねィ‥。…あーぁ、みっともないとこ見られちまったィ、他の奴に喋ったら切腹な」
「‥はいよッ」

俺達の勝負はまだ始まったばかり。
どちらかが早くオトせればいいとかそういう問題ではないけれど。
俺はまだ、副長の側を歩けるだけで満足だから。

長期戦、覚悟して下さいね。隊長。


end

since*2007.10.06

水沢
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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