粟楠ついったログ




◇夏バテ(青赤)

奴が所有していると言う黒塗りのベンツで、何故かお台場を爆走している。
乗れ、と言われて返事をする間もなく乗せられ急発進したのはいいが、この人は一体どうしたいんだか。
眉間に皺を寄せながら運転している彼をちらりと横目で見た。
「んだよ」
「なんでもないさ」
これは恐らく彼なりの気遣い、優しさなのだ。
俺はそれに応えるべく、自分が乗っている側の窓を開けた。
「開けんな赤林、クーラー意味ねぇだろ」
「開けた方が気持ちいいんじゃないかい?かなりスピード出てるしねぇ」
「…勝手にしろ」
このドライブに目的など無い。
朝から暑い暑いと唸っている俺に気遣って、彼はドライブに連れ出してくれたのだった。



◇夏バテ(風四木+赤)※四木てぃはポケモン好きで弁当箱はモンスターボール型

「四木さん、夏バテかい」
「何故分かるんです」
「…モンスターボールの中身が減ってないからねぇ」
自分のデスクで頬杖をついて溜息を吐く彼が心配になって問いかけてみた。
最近の暑さのせいで、彼は物をほとんど食べられていない。
せっかく風本が詰めてくれた愛妻弁当も、生ゴミ行きである。
風本は彼の弁当にはかなり気を使っている。
ちらりと横目で見やれば、涼しげな茄子の煮浸しやら冷めても美味しい人参の皮のキンピラやら、ゆで卵はうっかりヒヨコになっていたりする。
これもどうぞと弁当が入っていた袋にはトマトジュース缶まで入れてある。
だけど当の本人は食べれない。食べたいのに。
「食べてあげたいんですけどね、どうも食欲が無くて」
「風本もきっと分かってくれるさ、けど少しは食べないと、四木さん倒れてしまうよ」

中身を見ればどれだけ風本が夏バテを克服させようと努力している事が分かる。
この間俺は見てしまったのだ、休憩中に彼がレシピ本を眺めているのを。



◇絶対絶命のおっさん共(青赤)

「お前、どうした」
「ちっとばかし、しくじっちまってねぇ…まぁ何の事ァないさ」

事務所のドアを開けると、目の前に広がっていたのは若干の血の海と、そこに力無く座り込んでいる赤林の姿だった。
全身傷と血だらけで、サングラスは壊れてしまったのかかけていなかった。
床の血溜まりに躊躇もせず膝をついて、赤林の傷の具合を見る。
よかった、呼吸は安定しているようだ。
ずっと張り詰めていた息を、ゆっくりと吐く。

「心配させやがって、馬鹿野郎が」
「…心配してくれたのかぃ?…らしくないねぇ、青崎さん」
「こんなもん見せられたら、鬼の心臓も止まるっつーの」

こいつはすぐ見えない所で無理を重ねるから、本当に気苦労が絶えない。俺の。
笑う余裕が出てきたようなので、俺は安心して赤林の身体をぐっと抱き寄せる。
嗚呼、良かった、ちゃんと、温かい。

「生きてて、良かった」

奴の耳元で、震える声で囁いた。

「あんたの知らない所で、勝手にくたばらねぇって…約束、しただろう」
「そう、だな」
「ちゃんと約束、守っただろう?俺ァ」
「…そう、だな」
「さっきから同じ事しか言わねぇで、変な人だ」

クスリ、と笑みを零した赤林はなんだか嬉しそうに俺の胸に寄り添った。


(本当に、こいつが生きてて良かった)


◇まさかの工藤新一x静雄

騒めく木々に誘われるように夜の公園へと足を向けた。
立ち寄るつもりは全くなかったのに、足は勝手に古い木造のベンチに歩いて行って、すとんと腰をおろしてしまう。

「…俺、何やってんだろ」

冬が近く、少し肌寒い。
両腕を抱えるように自分を抱きしめると、目の前には黒い影。

「風邪をひいてしまいますよ、静雄さん」

見上げて目を凝らすと、目の前にいたのはベージュ色のロングコートを羽織った彼だった。
何も言わずすとんと隣に腰をおろすと、彼は俺の身体をそのコートで優しく包み込んでしまう。

「く、工藤さん…?」
「こうした方が、暖かいでしょう」

お互いが喋る度に、白い吐息が寒空を舞ってゆく。
彼はふわりと微笑んで、俺に口付けた。少しほろ苦い、缶コーヒーの味がした。

「工藤さん、どうしてここへ」
「僕の家から出ていく時の静雄さんの横顔が、気になって」
「え…?」

それって、まさか。いやでもそんなはずは。
不覚にもドキリと鼓動が高鳴る。

「隠し事しても無駄ですよ、僕は探偵ですからね」
「く、どう…さ…」
「僕に何か、言いたい事があるのでは?平和島静雄さん」

彼は不敵な笑みを浮かべた。
ずっと隠してきたこの想いが、彼には分かってしまったのだろうか。
すべてを見透かされている気分になる。
図星をさされた俺は、ふっと目を逸らした。

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