7日目


「‥‥う゛ぉ゛、」

「あれ、夜那?おかしいな。
声はまだ分かるけど、風邪で身長まで変わるもんかな」


どうしてこうなった。


俺は夜那に言われた通りに大人しく部屋に籠もっていたというのに。


もうそろそろあいつも帰ってくる頃かと思い、飯の用意でもしてやるかと寝床から出た瞬間、こいつがやって来た。

俺は若干の違和感を感じながらも、いつものように出迎えたのだが。

そこに居たのは黒髪金メッシュの、大ボケをかます女だった。


こいつが勝手に鍵を開けたのであって、俺は絶対に悪くない筈だ。

まさか家主以外の人間が鍵を持っているとは思わなかった。


声から推察するにこいつは、毎朝メシを集ったりチャリを借りに来たり、とにかく家主が散々面倒見てやっている奴だろう。

夜那が"ペット兼精神安定剤"とか言っていたから小動物のようなガキを想像していたが、意外にもすらりとした長身の女だった。


「‥俺は夜那じゃねぇぞぉ」

いい加減無言で観察し合うのに飽きて言うと、女はにやりと夜那そっくりに笑った。
「‥知ってるよぉ?」


何か言い返そうと口を開いた途端、再びドアが開いた。


「あ゛‥」

「あ、おかえり夜那ー」


今度こそ、この部屋の家主だった。
腰まで届く黒髪を風に靡かせながら、部屋に入ってきた体勢のまま固まっている。


夜那は俺達を交互に見ると、状況を察したのか深く溜め息を吐いた。

「勝手に家に入るなって、言ったよね」

「あー‥ん〜言ってたかも〜」

女は全く気にした様子はなく、へらりと笑った。
夜那も慣れているのだろう、一瞬困った顔をしたが何も言わなかった。






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