3日目


しまった。

そう思った時には既に遅い。
世の中というのはそんなものだ。

「あいつ‥どこいった!!」



少し時間を遡ろう。

私は授業を終え、スクアーロに必要な日用品などを買いに行くために急いで帰宅していた。
ところが、扉を開けてみれば部屋には人気がない。

「スクアーロさーん?どこー?」

リビングへ入りふとテーブルを見ると、小さなメモ用紙が置いてあった。



<<ホテルに戻る。早く剣返せ。>>


所謂置き手紙というやつだ。

宛名と自分の名前くらい書けよ。
と思うが、そもそもこの家に他の住人は存在しない。
まず間違いなくスクアーロが私に宛てて書いたものだ。

「あいつ‥どこいった!!」

そして現在に至る、というわけだ。


血塗れドロドロのスクアーロを拾ったのが一昨日の夜。
碌に身動き取れないのを見て、暫くうちで休んで行けと言ったのが、翌朝。
昨日の今日で、まさか早速脱走するとは思わなかった。
迂闊だった。

剣を返せ、ということは武器は持って行っていないようだが、何にせよ早く探さなければ。

私は帰宅して息をつく間もなく、スクアーロ捜索に飛び出した。




「すみません、腰ぐらいの長さの銀髪の外国人見かけませんでしたか?」

何の情報も無い中、私は聞き込みという、今日び安いドラマでもやっていないような原始的な方法で捜索にあたった。

私自身上手くいくとは思っていなかったのだが、実際にやってみると驚くほど情報が集まってくる。

どうやらスクアーロの容姿の非凡さが幸を奏したらしい。
そりゃあ、銀髪であんなに髪が長ければ印象に残るというものだ。
美形だし。

しかし、彼は仮にも暗殺者の身。
余りにも軽率過ぎる行動に、一抹の不安が過ぎる。


「あぁ、見た見た!!!なんかよく分からないけど、そこのスーパーの前でウロウロしてたからさ、声かけたんだけどねぇ、気づいてないみたいだったのよー」

「ありがとうございます!」






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