2日目
友人がいなくなるとあの女はすぐに戻ってきた。
そして俺の様子を見ると、にやりと妖しく笑った。
「やっぱり治ってないんだ」
「あぁ゛?」
「まぁそうだよね、治ってたら人じゃないか」
そっか、これでも人間だもんねー!
と失礼な事を呟きながら女は納得したようにふんふんと頷いた。
「何故そう思う?」
「だって…あんたはどう見てもカタギじゃないからね」
その手の道の人間ならば、さっきのような予想外の訪問客が来れば警戒して隠れるなり、武器を構えるなりするものだ。
だが、俺は怪我で体が動かせず、武器を探すだけに止まった。
まぁ、見つからなかったが。
(この女…只者じゃねぇな)
普通の女がそこまでその道の人間に詳しいはずがない。
「ガンつけないでよ、怖いなあ。
そんなんだからあたしみたいな一般人に裏の人間だってバレちゃうんだよ」
軽い口調だが、眼光は鋭くこちらの様子を探っている。
そっちこそ、明らかに一般人の目ではない。
「てめぇ、本当に一般人かぁ?」
「何?一般人が裏の人間の心理を解っちゃいけない?」
「本当に普通の人間なら瞬時には理解できねぇはずだぁ」
そうだ。まず理解しようともしないはず。
「そりゃ仕方ないね。あたし、心理学者のたまごだし」
「心理学だぁ?」
「そ。特にあたしは犯罪者の心理を専攻してるから」
なんとも面倒なヤツに引っかかってしまったものだ。
「じゃあ、あの手刀はなんだぁ?
素人じゃできねぇはずだぁ」
「ん?あぁ、あれ?
ぶっつけ本番だけど」
「はぁぁあ゛!!?」
そんなにびっくりしなくてもー、と女は愚痴を零す。
「てめぇ、わかってんのかぁ!?
アレは少しでも力が強かったり場所がズレたりすれば死ぬ可能性があんだぞぉ!」
「そんくらい知ってるさ。まぁそこは、あたしの素晴らしき才能のおかげだよね」
恐ろしい、この女…
一般人だとはとても信じられない、肝の据わり方だ。
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