03
ホームルームも終わり、俺は帰路につこうとしていた。
結局今日は、転校生に群がる女子たちの相手だけで終わってしまった。
早く奴を突き止めなければいけないというのに、とんだ邪魔が入ったものだ。
などと考え事をしながら歩いていると、学ランを着た少年に出くわした。
並盛中の制服はブレザーのはずだが。
少年は俺を一瞥すると、俺の方へつかつかと歩み寄ってきた。
「君、ボタン空けすぎ。あとそれ、指定のネクタイじゃないよね」
「‥‥そうだけど?」
よく見れば、少年の袖には赤い腕章がついている。
風紀委員、らしい。
確かに俺は第3ボタンまで空け、自前のネクタイを締めている。
風紀委員的にこの服装はお気に召さなかったのか。
ようやく声を掛けられた理由に思い至ったところで、耳に届いた風を斬る音に顔を上げる。
「‥咬み殺す」
少年の目つきが変わっている。
「は?‥っと、危ねっ」
次の瞬間、俺は攻撃を受けていた。
寸でのところでかわしたが、当たっていたらなかなかに痛そうだ。
とそのとき、背後から穏やかな声がした。
「恭弥さん、留学生さん!
こんな所で何してるんですか?」
振り返れば、そこには大量の紙の束を抱えた隣の席の少女がいた。
よく似た紙束を思い出し、軽い目眩を覚える。
「調こそ、何してるの」
「今度文芸部で部誌を出すので、その印刷です。恭弥さんにもお渡ししますね」
「ふーん‥楽しみにしてるよ」
少年は、何があったのか急に方向転換し、立ち去ろうとする。
「え、俺放置?」
「戦る気が失せた。でも君強そうだから、また戦ろうよ」
本当に参った。
ここにきた目的を達成するために、余り問題を起こすわけにはいかない。
だが、思わぬ強者に血が騒ぐのも確かで。
「‥‥おっけ」
気がつけば、俺は肯定の言葉を返していた。
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