01

学校から出て、かれこれ30分は経っただろうか。

私たちは、ありとあらゆる罠を避けつつ逃走していた。
撒き菱、穫り網なんて良い方で、頭上から栗やら毛虫やらが降ってくるなんてものもあった。
私はレオくんの指示に従って走ったり跳んだり、Uターンしたり。
塀の上を全力疾走した時は、猫にでもなった気分だった。

気が付けば日も傾き、私たちは河川敷に立っていた。
体力に自信があるとは言え、そこは普通の中学生。
もうくたくたで立っているのがやっとな私とは対照的に、レオくんは涼しげな顔にうっすらと笑みさえ浮かべていた。
何かスポーツをしているのだろうか。
何の種目にしろ、きっと上手いのだと思う。

「‥もう大丈夫かな」
「‥っなに、が‥‥?」
息が切れて、上手く言葉が紡げない。

「たぶん、リボーンも諦めたんじゃねーかな」
「!」
そうだ。
すっかり忘れていたが、私たちは勉強会から逃げて来たんだ。
生まれて初めてのサボタージュに、今更ながら罪悪感が沸々と湧いてきた。
ここに着くまでは走りっぱなしで、考えている余裕なんてなかったのだから仕方ない。
「あぁ、気にしなくて良いから。アイツの事だから、コッチが今日サボるのも計画の内だろうし」
そう言ってレオくんはカラカラと笑ったけれど、どうしても胸の辺りがモヤモヤが消えない。
顔に出てしまっていたのか、レオくんは不満気に唇を尖らせた。

「真面目だなぁ、調ちゃんは」

褒めているような、批判しているような。
どちらともつかない、曖昧な口調でレオくんは夕日を前に原っぱに腰掛けた。

「よくそんなんで疲れないよな」
「‥そういう性分なので」

隣に腰を下ろしながら呟けば、ふーん、というそっけない言葉が帰ってきた。
空が橙から赤に変わり、太陽が地平線の向こうへ消えていく。

日が沈むまで、私もレオくんも口を開かなかった。
ちょうど最後の光が消えた頃に聞こえた乾いた声は、きっと彼のものだったと思う。


「怖いだけなんじゃねーの」


私は、何も言うことが出来なかった。

prev * next
-back-



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -