09
転校生とは、往々にして好奇の目に晒されるものだ。
俺の場合も例に拠って例の如く、いや、普通以上の注目を集めた。
なにせこっちはイタリア人、しかも自分で言うのもなんだがそれなりに容姿も整っている。
俺の席の周りには、休み時間ともなればそれはもうハエの如く人が集まりインコのようにペチャクチャと話し掛けてきていた(主に女子が)。
しかしそれも、転入から数日経った今ではだいぶ落ち着きを見せていた。
それまで休み時間には集まる女子たちから逃げるように姿を消していた隣人も、席に留まることが多くなった。
数日前から続いている勉強会も良い刺激になったらしく、話を振れば多少なりと会話が弾むようにもなった。
そんな彼女だが、帰りの学活が始まると急にそわそわし始めた。
「‥‥‥‥」
「‥どうした?」
「!?‥‥っ別に‥」
さっと顔を逸らす彼女を見て、もしかして、とある理由に思い当たった。
「‥なぁ、勉強会サボらねーか」
「っ‥な、何を言って‥」
「嫌なんだろ?」
顔に書いてある、とからかうと、彼女はぱっと両手で顔を覆った。
その真っ直ぐさが、可愛いと思う。
「大丈夫。オレと一緒なら逃げれるよ」
「‥‥‥」
チャイムが鳴り担任が帰りの挨拶をした瞬間、オレは調の手を取って教室から走り出した。
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