07

 
ただの好奇心で、ファミリーに入れる気は特になかった。

未来のボンゴレを担う天才に妹がいるというので気になって調べたのだが、
輝かしい受賞歴や、スター性のある兄などとは結び付かないくらい内気で大人しく、特に秀でたところのない少女だという印象だった。

学校では心を閉ざしてしまっていて、大した収穫はなかったのだ。


しかし、俺の予想を遥かに超えて彼女は天才だった。

彼女が提示したのは一見意味が分からなくて適当に見えるプランだが、よく考えられている。


山本はやればできる天才型だから、教科書の内容をもう一度浚えば良い。
そこで、集中させるために問題集をやりながら内容を頭に入れる方法を取った。


レオは恐らく今までに勉強という勉強をした事はないが、頭の回転は早く理解力もある。
積み立て科目の数学を身に付ける為には小学生レベルからの学習が必要だから、教科書を読ませる。

アイツの読解スピードが早いこと、集中力もあることが分かっていなければこの方法は取れなかったはずだ。


獄寺がレオのフォローに回ったのはもちろんイタリア語ができるのもあるが、ツナや山本にはアイツの理論指導が難し過ぎるからだ。
元来賢いレオなら理解できるだろう。


そしてツナ。
やつは小学生レベルで躓いたままなのでレオ#と同じやり方で行きたいが、如何せん時間が足りない。

だがやつには多数の人間と出会いそれを記憶するという、少しだが人より長けた記憶力がある。
それを活用し、とりあえず赤点は免れるようにワークを暗記させる。
学校の定期テスト程度なら、それで大丈夫なはずだ。



それぞれの能力や性格に応じてこれだけの学習プランを立てるには、当然相手への客観的な理解が必要になる。
山本に獄寺、ツナならば分かるが、まだ出会って間もないレオを掴むなど、普通にできることじゃあない。

瞬時に相手の性格・能力を把握し、それに応じた適当な対応を取る。
マフィアにとって必要不可欠な交渉に於いて、その才能は発揮されるだろう。


無性にファミリーに欲しくなった。









いつものぐだぐだな勉強会とは違い、今日は全員が集中した沈黙の内にあっという間に時が過ぎた。
外はだいぶ暗くなっており、もう中学生は帰る時間だと言っている。


「今日は本当にありがとう。
またみんなで勉強会やりたいね」

「何言ってんだ、テストまで毎日このメンバーで勉強だぞ」

「えぇっ!?」
「はぁ!?」
「はい!?」
「あ、まじ?」

「お、それ良いなぁ!さすが小僧だぜ。
これでまた調に教えてもらえるのな」

4人が驚く中、自他共に認めるシスコン・山本は嬉しそうに妹の肩を叩いた。

「調、それまでのプラン全部考えとけよ。
お前はかてきょーだからな」


一瞬すごく嫌そうな顔をしたが、聡い調は俺に逆らっては行けないと気づいたようで、文句は言わずに小さく頷いた。


「じゃーなツナ!」
「失礼します、10代目!!」
「またな、沢田」
「‥お邪魔しました」

四者四様の挨拶をして、やつらは帰っていった。


「調ちゃんすごかったなぁ」

「あぁ。明日からファミリーへ勧誘するからな」

「な、やめろよ!オレ山本に殺されちゃうよ!!」

山本を巻き込むのも嫌なのに、とぐちぐちこぼすツナに鉄槌を加えて、オレはママンと夕飯の待つリビングへと向かった。

 

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