『それはまるで、』
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ピチャ.. クチュ...
「あぁっん....はぁん..」
独特な水音、喘ぐ名も知らぬ女の声。
閉め切られただだっ広い部屋には2つの音だけが響く。
突然、この場にそぐわぬ澄んだ声が鳴った。
「随分とお盛んだね、スペルビ・スクアーロ」
汚れを知らぬかのような澄みきった声だが、話す調子からはこの状況を見慣れているのが分かる。
スクアーロと呼ばれた男は体を女から離し、声の方に視線を向けた。
「てめぇ、どうやってここに入った?」
先程の声の主は窓際に腰掛けた、まだ幼さの残る黒服の少女。
少女を見るスクアーロの目は鋭く、うっすらと殺気も感じられたが、少女は気にする様子もなく笑った。
「この世には知らない方が良いこともあるのさ」
窓から差し込む月明かりに照らされ、少女の黒髪は濡れたように輝いた。
「それから、早くソレ終わらせてくれないかな。不快だよ」
言いながらも、少女はさして興味も無さそうに窓の外を眺めている。
「勝手に入って来たのはてめぇだろぉ」
ベッドの上の女は、おろおろして2人を交互に見つめていた。
「不快なのはソコじゃないよ。任務が詰まってるんだ」
言いながら少女は少し顔をしかめたが、またすぐに元のしかめつらに戻る。
「‥任務だぁ?」
怪訝そうな顔のスクアーロは、今や完全に女から身を引いていた。
「僕とスクアーロの2人でとあるファミリーを全滅させろ、だってさ」
少女は言いながら、己の得物を取り出し弄ぶ。早く任務に行きたくて仕方ないらしい。
「ほら、早くシなよ。外で待っててあげるから」
少女は立ち上がりドアの方へ向かった。
「‥チッ、もういい。興が醒めたぜぇ」
スクアーロはベッドから起き上がると、投げ捨ててあった隊服を無造作に羽織った。
「う゛ぉい、女ぁ。金だぁ」
隊服のポケットから財布を出し、ベッドの上で呆然としている女に適当に取り出した札束を放り投げる。
「えっ!?ちょっと‥!」
漸く状況が掴めてきた女はスクアーロに詰め寄るが、スクアーロは彼女には目もくれずにそのまま少女の後に続いて部屋を出ようとする。
「金はそれでいいだろぉ。チェックアウトはしておく」
一部始終を見ていた少女を追い越し、スクアーロはドアに手をかける。
「流石は傲慢な鮫だね」
少女はスクアーロに少し批判的な目を向けた。
月と闇(金払ってまでヤるほど溜まってるんだ)
(るせぇぞ、ガキィ!!)
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