02



目を覚ますと、見知らぬ人々に囲まれていた。

ひっと息を飲む音が口から出る。

見たことのない服に、武器。
こちらを伺う沢山の目は大きく、黒く輝いている。

どうやらここは外国らしいと理解するのに時間は掛からなかった。

口々に何か話しかけてくるが、何を言っているやらサッパリわからない。
それが更に焦りを煽る。
私はただ恐怖だけを抱えて縮こまっていた。

その時、甲高い声が響いて、私を囲む人集りに道ができた。
周りにいた人々とよく似た、でも装飾品の数などから恐らく権力者だと思われる壮年の男性と、
アジア風の服を身に纏った老爺と青年がその道を此方へ向かってくるのが見えた。

十分に近付いた所で長らしき人が老爺に耳打ちをする。
老爺はそれに頷くと更に此方に歩み寄った。
近くで見ると、髪は逆立ち目の周りには黒いペイントと、とても個性的なお爺さんだ。

「Hello, Can you speak English?」

速すぎて聞き取りずらかったが、確かに英語を話しているのがわかった。
耳馴染みのある言葉に、肩の力が少し抜けるのがわかった。

後は知っている限りの単語にジェスチャーを混ぜ、なんとか会話を成り立たせることに苦心した。
老爺の身振りを交えた質問に私が9割9分手振りで応え、それを老爺が周りの人々に別の言語で伝える。
そして彼らからまた新たに出た疑問を英訳して老爺が私に伝え、というサイクルが何度か繰り返された。

私はとにかく現状が知りたかった。
が、自分で分からないことを英語で説明されたって、せいぜい高校受験レベルの英語しか知らない私が理解できるはずがない。
何より、彼らは彼らでこの事態に困惑しているらしかった。

お互いに互いが困っているのを把握すると、彼らの対応は早かった。
口を挟む暇も手振りを入れる間もなく、気が付けば彼らの集落と思しき所に一室設けられていた。
何か分かるまで、行き場が見つかるまで此処に居れば良い、との事らしい。

正直、戸惑う。
行き場がないかも判らない程度には混乱していたから。
ただ、彼らが彼らなりの誠意、真心を向けてくれたというのだけはなんとなく分かったから、その優しさに甘えることにした。
というより、そうせざるを得なかった。
本能的に、頼れる人は居ないのだと、私は独りなのだと、悟っていた。








数日が経って、私は漸く事態が飲み込めてきた。
あの老爺と青年が甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたお陰である。
全く知らない言語を話す他の人々より多少馴染みのある英語を話す彼らの方が私も接しやすいだろう、という判断らしく、
私が何をするにも彼らのどちらかが必ずついてきた。

彼らとの会話と自分の知識を総合すると、ここは北アメリカ大陸の、先住民――ネイティブアメリカン――の暮らす地区のようだ。
それも、現代では彼らも所謂"文明化"している事を考えると、どうやら過去の。

老爺と青年は訳あって暫く此処に滞在しているらしい。
彼らの名前を知ったときに、ああなるほど、と思った。
私の中でパズルの枠組みが繋がった。

彼らに名はない。

現在の呼び名はブックマンとディック。



ここは、仮想19世紀末。







 Why? Where?


気づいたときには、

もう戻れない。







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