オレは次の記録地(ログ)に行くべく、パンダ――もとい、じじいと共に移動中だ。
「もうすぐ目的地じゃ。気を引き締めろ、ディック。」
「りょーかい。」
ディック――48番目の偽名。
戦争を記録するのは、これで48回目だ。
「見えるか。あれが、今回の記録地だ。」
オレたちは崖の上に立っていた。
下に見えるのは、戦場。
「はぁ……あっちでもこっちでも戦争、戦争――人間は馬鹿だな。」
「ディック。」
じじぃはオレを咎めるように声を出した。
「はいはい、今回の宿はどっちさ?」
パッと見た感じでは、実力は拮抗しているようだ。
どちらが勝っても負けてもおかしくはない。
「東側の予定じゃ。」
オレらから見て左にいるやつらのようだ。
「じゃ、早速行きますかっ。」
「いや、もうすぐ日も暮れる。それまで待とう。」
言われてみれば、日はおよそ戦場には似合わないような輝きで沈もうとしている。
「へいへーい。」
そのとき、夕日をも凌ぐ眩い光が空から放たれた。
-------キィイイイン
耳鳴りともとれる甲高い音がする。
「っ何なんさ、これは……!」
「ぐっ……わからん……っ」
脳を掻きまわすような音に必死に耐えながらブックマンが光の方を見ると、そこには何かの影。
「あれはっ……!」
「うっ……どうしたんさ、じじぃ。」
「……あれを見ろ。」
ブックマンの指差す方をラビも見る。
「!!人間……!?」
現れたときと同じように突然光は消えた。
そこから少女と思しき人影が落ちてくる。
同刻、そこから100qほどはなれた地点でも光に紛れ、少女が落ちてきていた。
「何だあれは……」
目撃したのは、美しい黒髪を頭の上の方で束ねた少年。