照明も点けない部屋には、ほんのりと廊下の灯りが差し込む。
窓もない薄暗い部屋で、彼女はベッドに横たわっていた。
先の任務で足の骨を折ったらしい。
昨今、医務室は忙しい。
ベッドに空きがないらしく、彼女は自室で療養していた。
唯一開いていたドアを閉めれば、その隙間から漏れ出す光以外、すべてが闇に包まれた。
外の世界と隔絶されたようなこの小部屋で、私は一つ、宣言する。
「……分かってると思うけど、もうすぐ"時の破壊者"が来るわ。」
布団がもぞりと動く。
くぐもった声が、うん、と話を促した。
「私は、介入しない事にしたよ。」
衣擦れの音が、一つ。
「貴女がどうするかは、貴女が決めればいい。
私はそれを止めないし、協力もしない。
……それだけ、言っておこうと思って。」
返事は、なかった。
「じゃあ、もう任務の時間だから。
お大事に。」
再び扉を開けて、私は明るい廊下へ踏み出した。