最後の一人の金鎚が置かれ、修復工事は終わりを告げる。
丸一日かけた作業のおかげで、教団本部はほぼ原型に戻った。
神田は未だ帰って来ていない。
「あンのバ神田……」
「あぁ゛?」
失礼、帰って来てた。
「あ、はは……おかえり、神田。」
「ああ。」
神田は目を細めて、まだ継ぎ接ぎの目立つ食堂を見渡していた。
たぶんこの様子じゃ、コムイの所にはもう行ってきたんだろう。
食事時って訳でもないし、私に用があるらしい。
「どうした?」
「……適合者が3人来る。」
「は?」
意味が分からずに神田を見るが、相変わらず目は食堂に向いたまま、しかめ面からは何を思っているのか読み取れない。
「同じ場所で見つかった。」
「ああ、新入りか。……同時に3人って、多くない?」
「ああ。少なくとも俺は聞いたことねえ。」
だから嫌な予感がするとか、何か怪しいとか、そういう事らしかった。
漸く宙を睨んでいた視線を逸らした神田は用が済んだようで、踵を返した。
「……何だろうね。」
答えにならない応えは、背中に揺れる黒髪に掻き消され、神田の耳には届かなかった。