memorize 4.




宍戸が酔っ払い記憶を飛ばした後はふたりの女性とはその居酒屋で別れた。
鳳は自分から仕掛けたキスを嫌がらず受けてくれた宍戸の本心が知りたくて一刻も早く女性と別れたいという思惑もあり、半ば強制的に女性を帰したようだった。

「宍戸さんの頼みでも…あんな人たちに宍戸さんをとられたくなかったんです」

「………」

「それから二人きりになって宍戸さんに好きだって告白したら…『俺も好きだ』って真っ赤な顔で答えてくれて…それで…」

「…うそ、だろ?」

鳳が語る自分の知らない自分の言動が宍戸を羞恥のドン底に陥れ、片手で口を押さえたまま一点を見詰めることしか出来ない。
そんな宍戸の態度に鳳は身を乗り出して主張してきた。

「嘘なんか吐いてません!間違いなく言ってくれました。しかもこのベッドの上でも何回も好きって言ってくれたし…」

「おまっ…止めろ!恥ずかしい」

「恥ずかしくなんかないです!宍戸さんが俺の気持ちに答えてくれたんだって、すごく嬉しくて…それで歯止めがきかなくなって…」

えへへ…と照れ笑いの効果音が聞こえてきそうなほど幸せそうに微笑む鳳に宍戸はもう全てを受け入れるしかないと腹を括る。
鳳が自分のことを好きだということ、宍戸が鳳に告白したこと、そして同意の上で身体を許したこと。

「と、とにかく、水持ってきますね」

鳳はベッドから下着一枚で床に降り立ち、その後ろ姿を見ると宍戸がつけたのだろう肩にうっすら歯形があり、背中には爪痕が赤く残っていた。
そんな鳳の姿に宍戸の胸は大きく高鳴って首からぶわっと焼けるような熱さが広がり身体を覆う。

あれは俺がつけた痕なのにまったく覚えてないなんて、すごく悔しくないか?
ずっと好きだった奴に抱かれたってのに痛みしか残ってないなんて、そんなの…

「長太郎!」

ベッドの上から急いで起き上がり、振り向いた鳳へと大股で近付く。
ビックリしている鳳を余所に宍戸は鳳の肩に手を掛け背伸びをして唇に噛みついた。
鳳がしたように甘いくちづけには程遠いが、宍戸の今の気持ちがそのまま現れたようなキスだった。

「し、宍戸さん!?」

「なあ、俺この歯形とか自分でつけたのに覚えてねぇんだよ。だから今度は記憶にしっかり残したいからさ…」

「えっ…あ……それって…」

「今からじゃ…ダメか?」

「そんなこと言われたら!!…で、でも…宍戸さんの身体に負担が…」

「そんなに柔に作られてねぇっての」

口許に挑発的な笑みを浮かべて宍戸の手が鳳の手首を掴む。
鳳はそんな宍戸の唇に蕩けるようなくちづけを落とした。

こんな行動を起こしたのも記憶の向こうにいる俺に嫉妬したからだと、自分の知らない自分に責任を押し付け、宍戸は赴くままに鳳に身を委ねた。

昨夜の俺よりもいっぱい好きって言ってやる。












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