memorize 2




昨夜は宍戸から頼んで開いてもらった合コンだった。
この中学から密かに続いていた鳳への想いを終わらせようと、この合コンはわざわざ鳳に選んでもらった女性にしたのだ。

あいつが彼女を作るたびにひとりで裏切られた気分になり、半ば自棄になって自分が彼女を作れば彼女と過ごす時間に比例して長太郎への想いを膨らます。
だから結局長くは続かなかった。

長太郎に想いを告げないのならいい加減どうにかしたいと、長太郎が選んだ女ならもしかしたら気持ちが変わるかもと考え、話を濁して合コンを頼めば何かしばらく難しい顔をしたのち、いいですよと静かに受けてくれた。

この合コンがどっちに転ぶかわからないにしろ、宍戸の提案を飲んだことが鳳の答えなのだと思い本当にこれでピリオドを打つ覚悟を決めた。

合コン自体はスムーズに進んでいたと思う。
可愛らしい女性が2人来て雰囲気のある居酒屋の個室で大学の話やテニスのことを説明したり、何一つおかしなところなどなかった。
アルコールも程よく入り女性2人が揃ってトイレに行ったことも覚えている。
女性はああやって作戦会議するんですよね、と鳳はわかった口をきいてそれに軽く相槌を打ちながら長椅子に手をつけば偶然鳳のそれに重なった。

あの時普通ならごめんのひとつで手を引っ込めるだけで済んだはずなのに、宍戸は鳳との久しぶりの触れ合いに思わず手の甲に指を這わせた。
昔よくハイタッチをしていた後輩の手は今はテニスの影もなく滑らかに整えられていて、その質感に寂しさを感じてしまったのかもしれない。

「…宍戸さん?」

「あっ…ごめ…」

我に返り、自分のしていたことへのおかしさに気付いた宍戸は咄嗟に手を引っ込めようとした。
しかしそれは叶わなかった。
鳳の指が宍戸の指に絡みついてきて、手の動きを妨げてしまったからだ。
いや、本気を出せば絡んだ指を振りほどくこともできただろうが、それが出来ない宍戸は自分の意思の弱さに心の中で舌打ちした。

「長太郎…」

「こんなことされたら…」

「な…に…」

鳳が宍戸へと覆い被さるように顔を近付けてきたと思ったら、満員御礼の居酒屋の個室で合コン中に宍戸は唇を奪われてしまった。
瞼を閉じるなんて芸当も出来ないほど唐突に、宍戸の唇に触れるだけの長いキスをしてきたのだ。
頭の中は真っ白になり身体は焼けるように熱く、しばらくしてから唇を離した鳳の瞳を見詰めることしか出来なかった。
鳳はぎゅっと絡める指を強くする。

「宍戸さんは…」

「ごめんなさーい!遅くなりました」

鳳の言葉を遮ってトイレから戻ってきた合コン相手が戸を引いたのとほぼ同時に宍戸は鳳から極端に距離を空けた。
絡め合っていた指も振りほどいて、宙を切ったその手は目の前にあるグラスを掴んでいて中身を一気に飲み干していた。

鳳は何事も無かったかのように女性ふたりに笑顔で話し掛けている。

そんな鳳の声をどこか遠くで聞きながら宍戸は整理しきれないいろんな気持ちを誤魔化そうとピッチを上げてアルコールを飲み出していった。
隣で心配そうに見守る鳳が宍戸の肩に手を置いたのまでは覚えている。
しかしそれからどう記憶を遡っても、今鳳と自分が同じベッドで事後の睡眠を貪っているなんて宍戸は事の経緯がまったく理解出来ないでいた。







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