Dream


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Episode2. 05



ベルツリー急行で何かが起こると沖矢に告げられて1番最初に思い浮かべたのは平成のルパンだった。来月ベルツリー急行で宝石を狙うという内容だと記憶している。

「怪盗キッドか…園子ちゃんがファンだったからもしかしたら…」

案の定、列車のオーナーである鈴木財閥がいくつか席を確保していることがわかった。キッドが下見に来ると思っているのか別の目的があるのかはわからないが、園子が乗るためのものであることは間違いないだろう。人数からして毛利親子やコナンだけではなく探偵団の子供たちも同行するようだ。

「ベルツリー急行で何かが起こる…何かが…」

具体的に何が起きるかは沖矢もわからないのかもしれない。
だがこの言葉が告げる意味は『彼らが動く』だ。
降谷はまたしばらく組織の任務だと言っていた。それがこのベルツリー急行絡みなのではないだろうか。
しかしベルツリー急行に乗るのかと直接降谷に問うのは躊躇われた。知ってどうすると言われたら答えがない。
ただわかるのは、名前が知り得る情報のピースを持っておく必要があるということだ。だから沖矢はヒントを与えた。

「それなら自分で確かめるしかないわね」


□ □ □


ベルツリー急行が発車する日、名前は東京駅付近の駐車場にいた。
目の前には白いRX-7。ナンバーは新宿330 73-10。間違いない降谷の車だ。今日ここにRX-7があるということは、降谷はベルツリー急行に乗車したのだろう。

「意外と早く見つかって助かったわ」

降谷の家に車がないことは確認していた。だから東京駅周辺で元々見当をつけていた駐車場を回っていった。東京駅までの経路、防犯カメラの設置場所。条件を出して10数か所までに絞ることはできていたのだが、幸いにも目的の車は5か所目で見つかった。名前がピックアップした中でも1番東京駅に近い。おそらくベルモットも一緒なのだろう。
すでに時刻はベルツリー急行の発車時刻になっていた。調べられることは調べた。これ以上名前にできることはない。潜入捜査で動けない降谷の代わりに登庁して通常の職務を全うすることにしようと、そう考えた数時間後だ。
テレビに映っていたのは無残に半分になった鉄橋と、後続の貨物車が爆発により切り離されたベルツリー急行だった。

(何かが起こるってこんな派手なことだったの…?)

警察庁でたまたまそれを目にした名前は声を失った。
右上のテロップには『ミステリートレインが謎の爆発』と打たれている。

(蘭ちゃんたちは…)

咄嗟に携帯を取り出したが、蘭たちが乗車していることを待田ケイが知っているのはおかしい。眉根を寄せ、毛利蘭と表示された画面をそっと消した。

(コナン君は無事だろうけど、蘭ちゃんたちは大丈夫かな)

沖矢の言葉からも、この事件の中心には十中八九コナンがいるはずだ。
ここまで大事になると予想していたかはわからないが、彼なら逃げ道も用意しているはずだ。それよりも一般人の蘭や園子の方が心配だ。怪我などしていないといいが。

「これテロか?」

名前の後ろから先輩たちが顔を出す。確かに要人が乗っていればテロと言えそうだ。

「いえ、これたぶん降谷のところが一枚噛んでます」
「あー…あそこか」
「降谷も乗ってるのか?」
「はい」
「派手にやったなぁ」
「派手だからこそ跡形もないんだろ」

思い思いの感想を口にしている。やはり一般人ではない降谷の安否は誰も気にしていない。名前も1番最初に心配したのが蘭であったのだから先輩たちを非難する気はない。

「降谷は何か言ってたか?」
「いいえ。特にテロだとは聞いていません」

そもそも降谷からはベルツリー急行のことは聞いていない。それを教えてくれたのは翡翠色の瞳を持った彼だった。しかしそれをここで言う必要はないだろう。

「それならテロじゃないだろうな。県警に任せておくか」

先輩たちが散り散りになっていく中、名前だけがテレビの前で画面に見入っている。

(テロじゃない。でも目的はあったはず)

車両を大破させてまで消したかった何かが。

(物……まさか人…?)

物である可能性を考えてみるが、わざわざ列車が動いているところを狙わなくても他に方法は山ほどある。怪盗キッドのように物を狙うという行為そのものに意味があるのであれば別だが、あの組織がそんな酔狂なことをするわけがない。
ならばターゲットは人だ。
ベルツリー急行に乗ることを事前に知る方法は2つある。1つは定石の購入者リスト。だがこの列車は人気があり、オークションで競り落とした人間も少なくないはずだ。購入者リストにどれほど信頼性があるのかは怪しいところだ。そもそも購入者リストで確認できるような人物であればあの場で仕掛ける必要などない。
それよりもあの場で仕掛けるしかなかったと考える方が自然だ。

(ターゲットがベルツリー急行に“乗ることだけ”を知っていた…?)

ベルツリー急行の乗客であることを知るもう1つの方法。

「パスリング」

もしターゲットがパスリングを持っていたら?

「パスリングを持っていることをどこで知ったの?」

そこまで考えて、名前は数日前の記憶がフラッシュバックした。



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