Dream


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Episode1. 09



ポアロのドアを開くとキッチンへ下がる途中の安室と視線がぶつかる。

「いらっしゃい」

笑顔で迎えられカウンターを勧められる。相変わらず安室透は爽やかな好青年だ。
これを風見が見たらどう反応するのか興味がある。そんなことを考えてカウンターに座ろうとしたところで明るい声が名前を呼んだ。

「ケイさん!ここおいでよ!」

コナンが手を振ってくれたのでカウンターではなく2人席の正面に座らせてもらう。
時計を見ればよい子はもう寝る時間ではないだろうか。いや、時間がどうこう以前に小学生が1人で喫茶店に来るものだろうか。蘭も小五郎もおそらく梓ももはや違和感がなくなっているようだ。

「今日は空いてるんだね」

店内を見回して名前が言うと、コナンと注文を取りに来た梓が目を合わせる。

「さっきまでは結構混んでたんだよ。刑事さんたちがたくさんいたから」
「でもちょうど入れ違いで出て行っちゃいました」
「刑事さんたち残念だったね」

あははと乾いた笑いだけで返答する。この手の話はあまりしてほしくない。
コナンと梓の会話に内心冷や冷やしていると、案の定割って入る人間がいた。

「残念とは?」

梓の後ろから安室がひょっこりと悪意のなさそうな顔を出す。

「ケイさんってポアロに来る刑事さんたちに人気なんだよ。そうだよね?梓さん」
「ええ。今日もケイさん目当てで来店されていたみたい」
「だから待田が来たのかを尋ねてきたんですね」
「安室さんも聞かれたんですか?」
「はい。でも僕に質問してきたのは刑事さんじゃなかったですけど」
「ケイさん美人ですからね。会社帰りにポアロでケイさんを見て疲れを癒してるサラリーマンの方も結構いるんですよ!」

なぜか梓が胸をはって興奮気味に語り出す。というか勝手に人を清涼剤のように利用しないで欲しい。
安室をチラッと窺うと、なるほどと頷いているが目の奥が笑っていない。

「最近はケイさんが次いつ来るのかって聞かれることもあって」
「へぇそれは人気ですね。他にも何かエピソードが?」
「そうそう!大学生にも声掛けられてましたよ」

梓の一言に安室が眉を上げた。先ほどから名前本人は何も喋っていないのにどんどん話が進んでいる。顔が引き攣りそうになるのを抑えて平常心を装う。

「梓ちゃん…」
「あ、ごめんなさい!コーヒーでいいですか?」
「うん。お願い」

お願いだからこの話をやめて欲しい。
名前の内心など知らない梓は「いかに待田ケイが人気か」を語りながら安室とキッチンへ入って行く。安室は言葉巧みに梓から情報を吸い上げるに違いない。

「……もしかして安室さんに言っちゃまずかった?」

キッチンをじっと見ていたからだろうか。コナンが気まずそうに尋ねる。
まずいかまずくないかと言えばまずい。
しかしその理由を説明するわけにもいかず、そもそも2人の関係からしてコナンが納得する説明も思い浮かばない。
コナンに返答ができずにいると、安室がトレイを持って戻って来た。

「はい。ブレンド。ミルクは入れてあるよ」
「お気遣いどうも…」

カップを名前の前に置いた後も安室はそこから動かない。
コナンは何事かとこちらを見てくるが、名前も返答できるわけがない。とにかくコーヒーを飲もうとカップを持ち上げたところで、ようやく安室が口を開く。

「待田は人気者だな」
「いや、そんなことは…」
「昔からおじさんウケするのは知ってたけど、大学生までとは恐れ入る」
「大学生って軽いノリで聞いてくるから」
「その軽いノリで連絡先を教えてもらえそうに見えたってことかな」

この減らず口をどうにかして欲しい。
すると2人の会話を黙って聞いていたコナンが躊躇いがちに尋ねる。

「安室さとんケイさんって付き合ってないんだよね」
「いきなり何だい?そんなマセた質問をして」

マセた質問かもしれないがこの少年は蘭に自分の気持ちを告白している。降谷と名前の関係よりもずっと健全だ。ちなみに蘭が告白されたというのは園子からの情報だ。

「彼女じゃないのにケイさんにこだわるんだね」
「コナン君知ってたかい?待田は面倒な男に捕まるタイプなんだ」
「ブッ」

思わずコーヒーを吹き出してしまった。
つい先日警備企画課の部屋で流れた会話が蘇る。その時は反論もなかったが存外気にしていたのかもしれない。

「だから心配なんだよ。友人としてね」
「へぇ〜」

コナンは白けた目だ。絶対に信じていない。しかし面倒な男に捕まったのは本当だ。本人は不服のようだが。

「ここでバイトを始めたのは正解かもしれないな」
「そう思ってるのは安室君だけだから」
「男除けに使えるぞ?」
「遠慮します。自分でできます」
「ははは。ボク子供だから難しいことわかんないや」

コナンが戦場を去ろうとしている。腰を浮かせかけたのを必死に押さえて店内に留める。

「コナン君!待って!お姉さんがもう1杯奢るからここにいて」
「おや。小学生も守備範囲なのか」
「もう安室君は仕事に戻って!!」
「本当に付き合ってないの?」

「「付き合ってない」」

「ねぇやっぱり帰らせて……」



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