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風見警部補の勘違い



※ゼロの日常4巻(TIME.2〜3)ネタです。
※未読の方にざっくりあらすじ⇒早朝に安室宅を訪ねようと風見さん。事前に電話を入れるとなぜか時間を置いてから来るように言われる。いつもと違う様子に「まさか…女…!?」と疑った風見さんは招き入れられた安室宅で一人家宅捜索(?)を始める。そして髪の毛やらクレンジングやらを見つけて「!!?」。詳しいオチはコミックス4巻で確かめてね!



「で、風見は僕がこの家に女性を入れたと思ったのか?」

降谷がジトリと睨めば、風見はおずおずと口を開いた。

「……はい。そういうことに、なりますね」

大きな体を縮こまらせている姿は可笑しいやら情けないやら。部下が上司の生活を詮索するのもどうかと思うが、日々風見に心配を掛けている自覚がないわけではないので責任の一端は降谷にもあるのだろう。
しかし気になるのは別のことだったりする。

「むしろ入れてないと思うのか?」

降谷と苗字の関係は公にしていない。だがこれだけ2人と密に接している風見だ。2人がただの職場の同僚に収まらない関係であることはわかっているはずだ。
何度か風見が降谷宛に掛けてきた電話を苗字が取ったこともあったではないか。
案にそれを匂わせると風見は今度こそバツが悪そうに呟いた。

「でも……髪の色も違いますし」

非情に言いにくそうにしているが、風見の意図するところは理解した。

「なるほど。僕の浮気を疑ったわけか。風見、君はいつからそんなに苗字と仲良くなったんだ?」
「ちっ違います!断じてそういうわけでは…!!それにあの人は浮気調査なんて頼みませんよ!」
「人に頼むより自分で調べるタイプだよな」
「そういうことでもないです!」

必死に言い訳してくる風見を横目に笑う。
苗字は降谷の浮気を疑うことはないと言いたいのだろう。

(疑いようがないくらい態度で示しているからな)

直接的な言葉を与えられない分、目で、手で、指で、唇で伝えている。
降谷の心がどこにあるか、彼女が迷うことがないように。
どうやらそれは苗字本人でない風見にも自明のことだったらしい。ならば変な勘繰りをしなければいいものを。

「どちらかと言えば今の苗字の髪色はこんなだけどなぁ」

これ以上追及しても意味はないので少しだけ論点をそらしてやる。風見は明らかにホッとした表情で肩を撫で下ろした。
問題の髪の毛をつまみ上げると、その淡い茶色は本来の黒髪を染めている苗字の髪色と似ていた。

「黒髪のイメージがありまして」
「それはわかる。綺麗だからな。苗字の髪」
「……本当に自分が浅はかでした!申し訳ございません!!」

風を切る勢いで90度に頭を下げた部下に降谷は目を丸くする。なぜ風見がそんなことをしたのか彼には珍しく見当がつかなかった。
それもそのはずで、彼女のことを話す降谷の目が優しく細められた――それを見ることができたのは風見だけだったからだ。
それでも風見の自責を感じた降谷はニヤリと笑ってみせた。

「安心してくれ。この家に自分の痕跡を残すような女性は呼ばない」

顔を上げた風見はきょとんとした後に眉を下げた。

「そうですね。バレたら大変ですものね」
「お、言うようになったな?」
「苗字さんを見習おうかと思いまして」
「大いに見習ってくれ。あれくらい遠慮がなくてもいいぞ」
「それはちょっと……」

肝心なところで躊躇う風見はまだまだ甘い。また説教かなと心の中でそんなことを考える。
するとそれを察知したように風見の足元にハロが擦り寄って行くものだから堪らず笑ってしまった。



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