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きづかない
俺には、幼なじみがいる。
といっても2個したの女の子。
俺が2歳の頃生まれた女の子。それからずっと一緒にいて、むしろ、居るのが当たり前になっている子の名は、白神綾乃。
1人っ子のその子は、俺をお兄ちゃんとしたっていっつもくっついてまわった。
「お兄ちゃん!綾乃とずっと一緒にいてね!」
「おー。約束な」
「うん!約束!」
そう言うのが綾乃の口癖で。いつも幼い頃小さな指で指切りげんまんをして笑いあった。
−だけど。
中3の夏、俺は彼女ができた。
告ってきたのは彼女からで、俺もそんな嫌いではなかったし、まあいいか、な軽い気持ちでokの返事をかえして始まった付き合いだった。
それを幼なじみである綾乃にいった。
そのまま、飾り気もなく彼女ができた、と。
なんだろな、何か自慢したかったのだろうか、いや。そうではなく、お前の兄貴は心配しないでも彼女くらいできるんだ、みたいな。
そんな、ちょっとした自尊心とでもいうのか。
俺から告ったわけでもないのに。
年上の偉光とまで仰々しくはないけれど。
まあともかく、そんなんで軽く、今日の晩めしアジフライとでもいう様に何でもないように言ったのだ。
「彼女ができた」
と。
そしてそれからだ。
俺が綾乃から避けられるようになったのは。家が隣なはずなのに、めったに合わなくなって。綾乃も遊びに来なくなって。
その時の姉貴やお袋の荒れようは凄まじかった、とだけ追記しておこう。
なにせ綾乃は姉貴たちからねこっ可愛がられていたから、姉貴もお袋も寂しかったのだろう。しかしそこは姉貴たち。
女同士なにか分かり合えたのか、姉貴は2人で遊んでいるときいたし、お袋も俺が居ない時にお隣さんでお茶してきた、なんて言っているからまあ良しとしよう。
そうして、俺が受験生なのもあいまって、お互いに忙しくなり疎遠になったままで俺は中学を卒業した。
だから、気づかなかったし、知らなかったのだ。彼女が・・・綾乃が、同じ高校に入学するということを。
「続きまして、新入生式辞。新入生代表白神綾乃」
「はい。」
まさか、と思った。
たった2年、いや、2年も、なのか。
逢わないだけで、女の子はこうもかわるのか。
すらりとした手足に艶やかな黒髪。
背はそれほど高くはないが、小さくもない。
俺が知っている白神綾乃とは随分とかけ離れていたのだ。
「ー日、新入生代表、白神綾乃」
透き通る声で式辞を読み終えた綾乃はゆっくりと一礼をして壇上から降りる。
たったそれだけの動作でも、目を奪われたのだ。
ふと、目線があがる。
こちらに気づいたのか、綾乃は俺の知らない顔で微笑んだ。
「(宮地先輩)」
そう呟いて。
それは、ちょっとしたいじわる。
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