みつけた




12月上旬、冬。

10年に1度といわれる寒波が関東地方を襲ったある日。キンと澄み切った空気の張り詰める中、街には雪が積もり見慣れた景色が何処か神秘的な趣を醸し出している。

その日も健全な中学生の黒子テツヤはいつも通りと言うよりも、防寒対策でもこもこになりながら帝光中学へと登校していた。


時刻は10時20分


普段なら遅刻だが、この大雪のせいで朝、学校から遅延登校であると連絡網が廻ってきたせいでのんびりと滅多に見る事の出来ない銀世界を楽しんでいた。


「青峰くんと黄瀬くんは凄く喜びそうです」

部活での相棒である青峰と世話係になりようやく打ち解けてきた黄瀬を思い出して笑った。


何分青峰は少年のようなきあいがある。
虫を見つければ採ろうとするし、バスケは人一倍楽しんでやる。そんな青峰が雪をみて大人しくしているわけがない。

大方、わんこ気質の黄瀬とおそらく学校に既に登校しているバスケ部のレギュラーを無理矢理にでも誘って雪合戦でもしている頃だろう。


「そして緑間くんと桃井さんに殺られていれば面白いんですけどね。」

赤司くんと紫原くんがどちらに付くか見物です。まあ、決まっているのですけど。


ふふと笑がこぼれるなか、そんな事を思いながら交差点に差し掛かる。何気なしにふと横断歩道の向こう側をみる。

身を縮こませた人の中に、凛として立つ1人の男性がいた。背は黄瀬と赤司の間くらいだろうか。黒子の周りの人間が高すぎて見上げなれているせいか、それ程高くはないようだ。


「綺麗な髪、」

しかし黒子の目に付いたのは、その人の髪だった。

銀世界に溶け込む様な真っ白な髪。
何者にも汚されることを赦さない色。
凛として立つその人にはその色しか似合わないとも思わせる綺麗な髪色だった。


「なに宗教地味たことを、」

歩道の信号が青になり止まっていた時間が動き出すように群衆は歩き始める。それに黒子もはっとして脚を踏み出した。人に埋もれながら横断歩道をわたる。

すみません、ごめんなさい、という声が聞こえた。誰かがこの人波に揉まれているようで、少しばかり衝撃がくる。


「(こんな事ならもう少し早くに出るべきでした)」

そう思っていると、とん、と右側で身体が何かにぶつかった。そのすぐに顔を上げると横断歩道の向い側にいたあの人だった。


「あ、ごめんね」

「いえ、」

通り過ぎるさまに一言。
その一言だけで黒子は体温が上昇していくのがわかった。


「(う、わっ・・・!)」

何故か凄く恥ずかしくなって早く歩道を渡ってしまおうと足早に身体を動かす。


「なんで僕・・・?」

そんなに長くはない横断歩道を渡りきり、訳もわからずどくんどくんとうるさい心臓の音を落ち着かせる。

すると後ろの方からぐっ!と息が詰まったような声が聞こえた。気になって振り向くと、気になっていたその人が今まで付けていなかった包帯のような長い紐状の何かで引っ張られたようにこっちを、正確には黒子を見ていた。


白い髪とは対照的な黒の瞳は大きく見開いて影が薄いと言われる黒子をしっかりと見つめている。どうしたらいいのかわからず黒子つい、その瞳を見返した。

男は歩道の信号が点滅し出したのをみて慌てて来た方、つまりは黒子の居る方へと引き返してたと思ったら、黒子の手を取った。


「やっと見つけた・・・!」

俺のご主人様!

と芳香とした顔で言った。


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