「大和くんは、どこに行くんですか?」
寒い日だった。
つい先日まで暖冬だなんだと騒ぎ立てていたのに今度は厳しい寒さです、なんてちぐはぐな気象状況を今朝のニュース番組で言っていた。
「大和くん?」
「んぁ?ああ、ごめんごめん。きいてるよー。
高校だろー?」
「はい。もう推薦で決まったんでしょう?
……バスケ部は引く手数多だそうで。」
テツヤは俺の数学のノートを写しながらそう言うが、若干の怒りが滲み出ている。
ここ数日授業をサボっているのでノートの写し作業はまだまだ終わらない。
図書館だと見つかりそうなので
といって俺の部屋でその作業をしているテツヤを尻目に、本棚から漫画をとる。手伝う訳ねーだろ笑。
「アイツらはスポ薦でしか行けないだろー。
青峰と黄瀬は今更受験勉強とか
無理ゲー過ぎて笑えるわー」
「まぁ、そうですね。赤司くんや緑間くんならともかく、あの2人は落ちますね。」
「だろー?」
赤点常習犯の問題児2人はいまさらやっても最終学歴が中卒で終わりである。今までの3年間の付き合いでもし一般で受ければそうであろうというのは確信している。
「で、大和くんは結局どこなんですか?」
「ああ、そうだったねー」
ガリガリとグラフを書く。
ペラリとページを捲る。
「俺、推薦は蹴ったよー」
「はい?」
ピタリとシャーペンが止まる。
あ、これ続き出てたなー
「だからー、洛山も秀徳も梟谷も桐皇も
スポーツ推薦はゼーンブ蹴りましたー
だから俺一般でどっか受けるよー」
「……どっか、って……」
いつもは少し眠そうな水晶体が見開かれる。
「んー、AOも推薦ももう終わったからなー
後は2月の一般で勝負っすなー」
「…ぼ、僕、の……せいですか?」
「?なんで」
「だって、あの試合で……、僕は逃げて……」
「いいんでなーい?アイツらのあの試合は勝手にやればいいと思うしー、ガキだなって思うけど、俺は楽しくなかったし面白味もないから好きじゃなーい。シゲの事踏み躙ったとか思うのもテツヤ次第だし、別にアイツらと会いたくないから会わないようにしてるんでしょー?」
漫画の続きが出てるのを思い出すと続きが気になってきた。どうしよ。パタリと閉じて本棚に直す。うーん、買いに行くかなー
こっちを見ていた水色がつい、と目線をずらして色褪せたような瞳は写されたノートをみる。
「まあそれはテツヤとアイツらの問題だから俺は手出ししないけどー。だから別にスポ薦蹴ったのはテツヤのせいでもないし、アイツらのせいでもなーいの。俺の意思。」
教科書の例示問題を解く。
x2+mx+n=0 で解がx=2, x=-3 でした。mとnの値を求めよ。だってー。2次方程式だ。
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