※シュウが白竜をすっきりさせる話。
白竜がシュウの正体を知っている設定です。


「……」
白竜は仰向けになり、ひとつ溜息を吐いて己の腹部に両手を置いた。

原因はそう、ここにある。
なんだか靄の塊が自分の体内に渦巻いている感覚が眠気を遠ざけているのだ。今日も過酷な練習メニューをこなし、更に自主練習のセットをこなし、身体は既に疲れ重い。
だがしかし目だけは冴えて眠ることができない。

白竜にとっては初めての経験だった。
毎朝の義務として行われているメディカルチェックでは健康そのものだという結果だった。究極のシードを目指す者は体調の管理もしっかりしなければならない。

「この俺が病気……?」
自身に問う様にポツリと呟いた。

「白竜、病気なの?」
にゅっと突然、視界に映りこんだ黒い影。

「っ?!」
慌てて身体を起こせば、電気を消した暗い室内に見知った人影。

「シュウ?」

「やぁ、こんばんは 白竜」

「お前どうやってオレの部屋に入った? ロックが掛かってただろう」
確認の為にロックコードを入力するパネルの前まで行って確認する。セキュリティはきちんと作動していた。
シュウはただ、柔和な笑みを浮かべて佇んでいるだけ。

窓から入る月の光を浴びたその少年の姿は浮世離れしていて、白竜はハッとする。

「そうか、お前にはロックなんて関係ないな」

「うん。ごめんね、入るつもりはなかったんだけど、君がなんだか寝苦しそうにしてたから」

「腹の中に何か靄の塊を感じるんだ」

「靄?」
首を傾げて反芻したシュウに白竜はベッドに腰を掛ける様に施すと自分もその隣に座る。

「ああ。シャワーを浴びた時まではなかった。寝付こうとした途端、この辺りに靄の塊が渦巻いて俺の睡眠の邪魔をするんだ……明日、メディカルチェックでなにか引っ掛かるかもしれない」

「……うーん 気分が悪かったりどこか痛んだりはしないかい?」

「痛みは全くない。身体は疲労を感じているのに脳だけがやたら冴えているようだ」

「白竜 それって病気とは違う気がするよ」

「シュウ、原因がわかるのか?」
白竜が思わずシュウの肩を掴む。

「確実って訳じゃないけど、それは人肌が恋しいんじゃない?」

「人肌……?」
思いもよらぬ返答に目を瞬かせた。

「フン そんな訳があるか。俺がまるで寂しさを覚えているみたいじゃないか」
バカバカしいとシュウの両肩から手を外すが、その内の右手をシュウに掴まれる。
そしてそのまま向かい合って抱きしめられた。洋服越しに伝わってくる体温が心地よくて、白竜は抵抗をすることができない。

「どう? 少しは靄がなくなったかな」

「……ああ」
独特の髪飾りを付けた髪が揺れて白竜の鼻腔に微かな香りが流れ込んできた。

「森の匂いがする」

「ずっと森にいたからついたのかも」
その匂いに誘われるように身体を密着させてシュウの髪に鼻先を近づけた時、

「……ッ」
白竜は己の身体、正確には下半身に変化が起きていることに気が付いてしまう。

まさか、いや、しかし、これは

この異変にて初めて白竜は腹の靄の正体に気が付いた。

「シュウ、すまないが俺はトイレに……」

「大丈夫だよ 恥ずかしいことじゃない」
全てわかっているかのように、シュウが柔らかい声で白竜の耳元で囁く。


「僕が手伝ってあげるよ」

「手伝うって……ま、待てっ」
いきなりシュウの右手が白竜の背中から離れ、その中心部へと伸ばされる。何をされるのかシュウが何をしようとしているのかを理解する。

「だ、大丈夫だ! こうなった時は牙山教官の顔を思い浮かべると治まる」
その言葉に、今度はシュウが黙って瞬きを数回。

「…………くくくっ」

「なっなにがおかしい!」

「だっておもしろいんだもん」

「とにかく、手伝う必要はない」
雰囲気が乱れた今がチャンスだと白竜がそう切り出し、ベッドから立ち上がろうとする。
しかし、それはあっけなく視界が天井を向いたことで阻止をされた。
一瞬何がおきたのか理解が出来ずシミ一つない無機質な白い天井を眺めていた。

「遠慮しないでよ」
そして最初と同じように上からシュウが覗き込んでいる。

「遠慮などしていない!」
思わず声が大きくなり、自分で口を噤む。
あまり騒げば見回りをしている教官が勝手に入ってくる恐れもある。口を噤んだ代わりにキッと眦を吊りあげて睨んでみるも、シュウの柔らかな笑みは崩れない。

「じゃあ言葉を変える。僕が触りたいの」

「シュウが?」
上から覆いかぶさるようにしてシュウの顔が近づく。黒く大きな瞳から目が離せなくなっていた。

「そう 僕が白竜に触りたいんだけど、いいかな?」

「……好きにしろ」
白竜は諦めたように顔を逸らし枕に顔を半分埋める体勢になった。



シュウは白竜が着込んでいる黒いハーフパンツの上から中心部をやんわりと揉みこんだ。

「……、」
形を確かめるように、ゆるゆると時に指で締め付けるように刺激を与えるとすぐに張り詰める。脈打つそれへの感想を述べようかと思った。
だが、きっとそんなことをしたら白竜は現在の時間帯などお構いなしとばかりに暴れるだろうと思いシュウは黙って揉みこむだけにした。

「う、……」
小さく声が漏れたのを聞いて今度は指一本でなぞりあげる。布地越しの刺激では物足りないのだろう。微かに白竜が太腿を擦り合わせたのがわかった。
ハーフパンツからもわかるほど屹立した白竜自身を見つめ、次はどうしようか考え、そしてシュウはゆっくりと白竜の太腿に触れた。

「白竜、びっくりしないでね」
確認するように優しい口調で言いながらシュウは右の太腿から手を上へと移動させていく。
シュウの手はそのまま寝巻として着込んでいたハーフパンツをすり抜けて白竜の足の付け根に直で触れていた。

「うわ!」

「シー……」
人差し指を口元に持っていくと、白竜も慌てて両手で己の口を塞ぐが、普段は余裕を持て余している紅い目が揺れている。そんな白竜を更にあやすように優しくこめかみにキスを落として下着すらもすり抜けた右手で熱ではち切れんばかりの白竜自身に触れた。

「んん、んっ……」

「白竜……気持いい?」
目には見えないが、手がぬるつく感覚にしっかり快楽を拾っていることがわかり先走りの蜜を掌に塗りつけて先端を包みこむように擦り付けると、白竜から切なげな声が漏れる。

「んっんん、シュウ……う、む」
しかし気持ちいいという事実を認めたくないのか、それとも羞恥からか。目を瞑り、声を抑え唇をすぐに噛みしめて首を横に振る。それがシュウには少し寂しく、同時にもっと白竜の知らない顔を見たくなった。

「気持ち良くないの?……これは?」

「う、うぅっ」
口調は穏やかなまま攻め方を変え、人差し指の腹で鈴口をクリクリと円を描くように弄ると指に先走りが絡みつき滑る。

「ぅう、うっ―ッ」
その刺激はたまらなかったのか、白竜は背を反らすが未だにその目は瞑られたままだ。
シュウはその緊張を解すように唇の端、顎、頬、目の下、瞼へとキスをしながら右手を動かし続けると、白竜の口からは堰を切ったように声が漏れる。

「あ、ぅ、あ、あぁっうっ……シュウ」

「気持ちいい?  あっ」
優しく唇に触れようとした時、白竜の腕がしっかりとシュウの首の後ろに回される。施設の中で鍛え抜かれた逞しい腕は離すまいとでもいうようにしっかりと力が込められていた。

「シュウ、あ、く、ッ……」

「白竜 ん……」
互いに名前を呼び合いどちらとも唇を寄せ合う。
優しく啄ばむように唇を吸いあげて、角度を変えては唇をまた合わせた。

「んぅ、んっ……ん、ん」
キスに慣れていない白竜が少しばかり苦しそうに唇を開けて酸素を求める隙にシュウは舌を口腔内に潜り込ませて甘く吸い上げる。粘膜同士の接触に敏感に反応し、暗い室内でもわかる白い喉元が反らされた。

「は、あ、苦し、いぞ……」
酸欠と熱さと快楽で思考が鈍っているらしいは口元から唾液が垂れていることにも気が付かずにそう反論する。

「気持ち良くない?」
わざと手の動きも緩やなものにして、小首を傾げて尋ねてみると白竜は返答に困ったように眉を寄せた。

「俺が、言いたいのはそうでは、ぁくぅっ―」
反論のタイミングを合わせてシュウは白竜の肉茎を人差し指と親指を使って牛の乳を搾るようにしながら上下に扱く。
眉を寄せ、首の後ろに回した腕の力を強めながら白竜は反論を止めて与えられる刺激をただ甘受した。

「は、ぅう、うっ……うっ」
太腿が震え、吐きだされる息の感覚が短くなっていることで限界が近いのだとシュウは覚り、先走りのぬめりを利用して更に白竜自身を搾るように扱いてただ高みへと追い詰めていった。

「う、あぁっ――」
強烈な快楽で瞼の裏に火花が散るような感覚と共に、白竜はあっというまに熱を吐露する。


「はぁ……はぁ……」
吐精したことで冷静さを取り戻した白竜は下半身の不快感に眉を顰めた。
下着が生温かさと湿り気を帯びてぴったりと肌にくっついている部分があることがわかる。

「ごめん、着けたまましたから」

「いやいい。それより早くそれを拭け」
下着から手を抜いて己の掌にべったりとくっついた粘液を見ているシュウにベッドの柱に掛けておいたタオルを投げて拭くように指示した。はぁ、と溜息と同時に前髪を掻き上げると立ち上がって必要最低限の用意された服が入っている小さなクローゼットに向かう。

「……嫌だった?」
ベッドに腰掛けたままのシュウが背中に向かってそう問いかける。

「嫌ではないが、シュウは意地が悪い」
余裕がなかったからあんなに乱れただけであって、いつも通りの自分であれば、あれほど翻弄されることはなかっただろうと思い返すと悔しくてたまらない。

「それは君が……」
そこまで言いかけてシュウは口を噤むと、目を伏せて黙る。
返答が返ってこないことに気付いた白竜が下着を取り出して振り返ると、シュウはどこか困ったような顔をしてベッドに腰かけていた。
窓から差し込んでくる月明かりの下で揺れる黒髪を見ると、やはり彼が自分とは同じではないのだと気づかされる。

「それより靄は消えたんじゃない?」
話題を自分から逸らすようにシュウがそう問いかけた。

「そういえばない。それにすごく眠気が来た」

「それじゃあ早く着替えて寝た方がいいよ」
シュウが指さす方向に置いてある電子時計の文字盤を見て白竜はギョッとした。ゴッドエデンにて起床時間は皆一律で、その時間を知らせるサイレンがいつも鳴る。後3時間ほどでその時間まで迫っていることに白竜は初めて気が付いた。

「こんなに時間が経ってたとは」

「それじゃあ おやすみ白竜」

「あ、待て シュウ」

「……なに?」
呼びとめておいて白竜は自分が何を言おうとしたのか気が付いて、それを言うことに戸惑っていた。
シュウはそんなことはお見通し、とばかりにいつもの柔らかな、それでいて底の見えない笑顔を浮かべていた。

「いや、スタジアムで会おう」
言おうと思った言葉を飲みこむと、代わりにそう口にする。

「そうだね。おやすみ 白竜」

「おやすみ シュウ」

瞼が一気に重くなり、擦って眠気を飛ばした時には部屋からシュウは姿を消していた。
すっかり元の静寂を取り戻した部屋の中、白竜はハーフパンツを下ろし、汚れた下着を下ろし、現状を見て顔に熱が集まる。

「俺ばかりだったじゃないか……」
誰もいないうちにタオルと共に洗わなくては、と考えながら白竜は月明かりが射しこむ窓へ向かって愚痴のように言葉を零した。
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