※新年を迎えて天馬がムラムラしちゃう話


パチリと天馬が目を開けた。

それと同時に視界に入った綺麗な寝顔に驚き、一気に眠気が吹き飛ぶ。
身体を起こして辺りを一望して今の状況を思い出す。

昨日は1月31日の大晦日。
剣城の両親から許可が下り、剣城は木枯らし荘の天馬の部屋にて年を越すこととなった。

そして親戚の秋が部屋に置いてくれた炬燵に2人で入り、恒例の歌番組を見た。カウントダウンを2人でして、隣や上の階の住人が新年を迎えたことにうかれ、騒ぐ騒音とそれを止める声に苦笑しながら今年あったことを振り返ったりしながら話していた。

最初に舟を漕ぎ始めたのは天馬で、最後に話したのは今年も一杯サッカーをやろうという話だったはず。起きた自分と未だカーペットに横たわり眠っている剣城に掛けられた毛布は、電気が付きっぱなしだったことを気にして訪れた秋の配慮であろう。
朝食を食べるときに礼をしなければ、と天馬は思いながら未だ眠る恋人に目を向ける。

いつも隙がなく、神経を張り詰めているイメージがあり、剣城くんってクールだよね なんていった狩屋の言葉を思い出した。
そんなクールな剣城でも寝顔はどこか幼い。

「俺、剣城の寝顔見たのは初めてかもしれない……」
ゆっくり音を立てないようにして近づくと微かに零れる寝息。
鋭い刃を思わせる双眸を今は閉じられているのが幼さを醸している原因かもしれない。

「剣城」
囁くように名前を呼んで顔を近づけてみると「ん……」と小さな言葉が唇から零れた。
その仕草になんともいえない艶を感じて心に小波が立つ。
ダメだと叫ぶ理性より、触れたいと言う本能が強く天馬を揺さぶった。

「今なら大丈夫だよね」
自分に言い聞かせるようにそう言うとゆっくり、剣城に掛かっていた青い毛布を下へとずらす。

剣城は外気の寒さを感じたのか、少し眉を寄せたがそれ以上は動かない。天馬はそれを見てゆっくりゆっくり、彼が着込んでいる赤いシャツを捲りあげて素肌に触れて脇腹にそっと触れてみる。
肋骨の凸凹の感触を確かめるように指で撫で上げて様子を見るが、やはり剣城は微動だにしない。
そこで好奇心が更に膨れた天馬はもっとシャツを捲りあげる。

まだ大丈夫、そう自分に言い聞かせながらゆっくり胸の突起にそっと指で触れるとすぐにツンと尖り始めた。

「ン……」
またも唇から洩れた更に色香のある声に天馬は顔をあげるが、剣城は以前眠ったまま。
天馬は安堵の息を吐くと、ゆっくりその寝顔に己の顔を近づける。

「もうちょっと触っていい……?」
そう、それは返事のない天馬の独り言のつもりだった。

剣城の肌を堪能したらシャツをすぐに戻して毛布を掛けなおし、適度な時間になったら声をかけるつもりだった。

ところが天馬のその問いかけに応えるようにぱっちりと双眸が開かれて黄色い瞳がしっかりと天馬の瞳を捕え、それから、細められる。


「好きにしろよ」


「――!?」
その返答に、驚きのあまりに声が出ない。
天馬は自分の心臓が早鐘を打って全身の血の気が引き潮の如く、サァと音を立てて引いて行くのがわかった。

「剣城……いつ、いつから起きて」

「今なら大丈夫とか独り言いってた時だ」
捲りあげられたシャツを戻しながら平然と剣城はそう言うのに対し、次は一気に恥ずかしさによって血が天馬の顔へと集中し始める。

「それってほぼ最初から起きてたってこと?」

「ああ」
もしかして蹴りの1つは食らうかもしれない、と覚悟しながら天馬は脳裏にデスドロップを打つ剣城の姿を思い浮かべた。

雷門のエースストライカーの蹴りだ。正月休み中に回復するレベルの怪我で果たして済むのだろうか。

「あ、あのごめんっ本当にごめん 俺、剣城の寝顔見てたらなんか我慢できなくなっちゃって」
蹴られる前に正直な理由を話さねば、と思いそう言うが剣城は起き上がると腕組をして天馬を見つめる。いつもの剣城の癖だ。

「松風、普通ああなった時、襲ってる相手に了承は取らないもんだぜ?それに……」
そこで少し唇を噤んだ剣城だったが、すぐに次の言葉を口にする。

「好きにしろって俺は言っただろ」
その台詞に天馬が数回瞬きをして、言葉を脳内で反芻する。
つまり、それは、そういうことなのだろう。

「怒ってないの 剣城」

「怒る理由なんてねぇよ」
拗ねたように未だ腕組をしながらそう言う剣城に天馬は舞い上がるような気持ちをグッと抑え、優しく剣城の唇、そして素肌に触れた。

***
年末年始の天京



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