※ハロウィンにちなんで人外パラレル
吸血鬼の京介&マサキと狼男天馬の話。
一部、呼び方などにねつ造ありです。


剣城京介はだいぶ変わった吸血鬼だ。

日光に当たっても日焼けのような痛みは走るが灰にならず、銀細工に触れてもその部分が少し痒くなるだけ。
にんにくは単体だとやや苦手であるが問題ない。

ここまでは現代を生きる吸血鬼の大半も克服した欠点であるが、剣城京介が変わりモノだと言われる所以は血液が苦手だからである。

新鮮な血液に勝る食料はない、と同胞たちは喜んで血を啜るがどうにも剣城には鉄さびのような臭い、そして生温かさがどうにも好きになれなかった。
血液に比べると栄養価は劣るものの、果物や花の生気を吸って生活している。


朝の雷門中学 校門前。
剣城はただの学生として勉学に励んでおり、見た目はなんら変わらぬ人間そのもの。
いわゆる人ならざる存在がこうして人間に紛れて生活をしていることは、当の人間以外には日常茶飯事のことだ。

生徒会の役員が校門前に立って挨拶をしているのを横目に通り過ぎ、あくびをひとつ噛み殺す。

「……はぁ、」
携帯のカレンダーを覗き見て10月31日という日付を目にした剣城は憂鬱な声を漏らさずにはいられない。

この日は、剣城が1年に1度 用意された血を飲まなければいけない日だった。
血液に比べると栄養価も燃費もその他の代用品では悪い。

兄の優一から「せめて1年に1回は血液パックの血を飲んでくれ」と心配そうに言われ、渋々と了承をしたのだ。

「おはよ って、何ため息ついてるの?」
登校途中で声を掛けてきたのは狩屋マサキ。
彼もまた、剣城と同じく吸血鬼である。

「……」

「あ、お前には関係ないだろとか思ってない?」

「うるさい」

「当たりか 今日は飲むんだろ?だって10月31日だし」
剣城の眉間に皺が寄ったのを愉快とばかりにマサキはケラケラ笑って真顔に戻す。

「けどさ、そのままは絶対身体が持たないよ」

「どの種類を飲んでも、苦手なんだ」
去年の同じ日に飲んだ時の感触、味、においを思い出して皺が更に深くなる。
下駄箱の番号を確認すると靴を入れて上履きに履き替え、教室へと続く階段をのぼっていく。

「顔色悪いのもちゃんと飲んでないからなんじゃないの?」

「ほっとけ」

「剣城、狩屋 おはよー何の話?」
2人の会話に横入りをしてきた少年。
栗色で風変わりな癖毛が首を傾げるのと共に揺れた。

剣城そして狩屋のクラスメイト、松風天馬だ。
くりくりとした大きな瞳を動かしクラスメイトの顔を交互に見る。

「天馬くんおはよう 何を話していたかは……剣城くんに聞いてみたら?」

「狩屋おまえ……!」
きつく睨みつけても愉快そうに吊りあげられた笑みは消えること無く、剣城は舌打ちをする。
公共の場でこういった話は慎むべきだった。

「牛乳が苦手なんだ。どのメーカーの飲んでも気持ち悪くなる」
随分苦しい言い訳で、狩屋も笑いたいのを必死に堪えているようだった。

が。

「牛乳かー結構、苦手って人いるよね」
天馬は別段疑うことなく相槌をうって次の話題を都合とするが、1時間目開始を知らせるチャイムが彼らの頭上を通って鳴り響いた。

「わっ急がないと!!」
天馬が大きな目を更に見開いて、階段を駆け上る。
それを追いかけるように剣城と狩屋も足を速めると自分たちの教室へと向かった。






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