*天京がお互いにちょっとやきもち妬く話。



「1組の剣城くんってかっこいいよね」
休み時間の半ばに、とある3人組グループの女子生徒が発したその言葉。

自分の机で次の授業準備に取り掛かっていた天馬は思わず手を止めてしまう。
興味はない素振をしながらも聴覚はそちらへ意識を集中させ始めていた。

「え、でもちょっと怖そうじゃない?」

「私、この前の帝国学園との試合を神童先輩目当てで見に行ったんだけど、技を決めてる剣城くんがかっこよかったー」

「わかるわかる! あの最後の点差に繋がったシュートが特にかっこよかったよねぇ」

「じゃあ私も海王学園との試合に行ったら剣城くんに注目しようかな」
3人組はそんな話題を楽しそうにキャイキャイはしゃぎながら盛り上げていった。


剣城がかっこいい。

それは勿論、天馬も理解していた。
必殺技のデスソードやデスドロップ、そして化身であるランスロットを使用したロストエンジェル。
どれも剣城の技は魅せる何かがあるということは天馬にも理解は出来ていた。

しかし、サッカー部員ではない生徒たちがそこに注目して話題の中心となっているとわかった瞬間、チクリと心が痛んだ気がした。

「てんまー次、理科室だよ」

「……」

「天馬? おーい」

「あっ! 信助」
視界に唐突に表れた同級生に驚いた天馬が慌てて普段の表情に戻す。

「大丈夫?」

「へ?」

「なんかボーっとしてたよ」

「ごめん。ちょっと考え事しちゃって……すぐ準備するから」
カバンの中から筆箱と教科書、そしてノートの一式を持つと急いで廊下へと出て行った。



一通りの授業は終わり、放課後。
生徒たちは各々と目的を果たすべく散り散りになっていく中、サッカー部は今日もまた練習に励んでいた。

剣城が誰もいないゴールへとボールを蹴りあげる。

パシッ
そんな音と共にボールは真っ直ぐに、狙い通りの場所へと飛んでいく。

「剣城の奴はパワーもコントロールも優れているな」

「ええ。俺も負けていられません」
練習の様子を見ていた神童と三国の会話を聞いた天馬も、自分の練習を止めてそちらへ顔を向ける。

剣城は周りの視線も、声も気にせずもう1つ足元にあったボールを蹴りあげるとまた1つゴールへと綺麗にシュートを決める。
10番という数字を付けたその背中は同性から見ても、頼もしさを感じさせる。

『剣城くんってかっこいいよね』
『次の試合では剣城くんに注目してみようかな』

休み時間に話していた女子たちの会話が脳内で反芻されて、一気に胸が苦しくなる。

「キャプテン……俺、ちょっと顔洗って来ます」
練習を止めると、口早に神童にそう告げて備え付けの水道まで天馬は走って行った。





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