「あれ?木野じゃん」

あきおの声がした。
買い物終わるの、早くねぇか?いつもはもっと……

そこで、ハッとして部屋の壁に掛けられたカレンダーに目をやると、ビンゴ。
明日はアイツが来る日だから、必要な物はもうほとんど買い込んであるんだ。
手に持っている袋から透けているのは飲み物と軽食類だけ。

「不動君?! お家この近くだったんだーお久しぶりね」

「お互い様。で、お前犬飼ってたんだ?」

「そうなの。親戚の家で生まれた子を一匹引き取って……」
どういうことだ?
あきおと天馬の飼い主は友達?

「へー俺も最近、猫飼い始めてさ」
え、おい。
なんで網戸開けるんだ。
や、やめろ!!
オレの抵抗も空しく、あきおがひょいとオレと兄さんを抱えた。

「こーら、逃げんな。こっちが京介、で、こっちが優一」

「兄弟だったのね。実は天馬が最近、お散歩の途中で必ずここに立ち寄るの。私が慌てて追いかけても、姿が見えなかったからどうしてここに来るのかよく、わからなくて」

「遊びに来てたって訳か。えっと…天馬だっけ?」

「わんっ」

「いつでも来いよ。京介なんて遊び盛りのはずなのにちっとも外出しねぇんだ」
あきおが兄さんに視線を見やる。

「優一の足が心配で……だとは思うんだけどな」

『はいっ仲良くします!』

『勝手に決めるな、オレは仲良くする気なんてこれっぽっちも……』
そこまで言いかけてあきおがぐっとオレを天馬の目の前まで持っていく。

やめてくれよ。
鼻息がかかるじゃねぇかよ……

「ほら、仲良くしろ」

仲良くしろって人間同士の都合だろ。

『また遊びに来るね!』

ぺろっ

『っにしやがる!!!』
右足が勝手に伸びてた。

「きゃうんっ」
鼻先を掠めたのは流石に痛かったらしい。

「天馬、大丈夫?!」

「京介!!何してんだよ」

『京介』

くっ……天馬のせいであおきと兄さんから叱られちまった。

「悪いな、木野。ちょっと京介の方が機嫌悪いらしい」

「ううん。こっちこそごめんね、天馬ってばよっぽど嬉しいみたいではしゃぎすぎちゃったみたい」
飼い主が抱えていた天馬を地面に下ろすと、リードをしっかりと握りしめる。

「また、日を改めるね」

「ああ。そうだ、俺がバイト行くときに網戸を少し開けとくか」
オレと兄さんを部屋の中に戻して何やら恐ろしい提案を天馬の飼い主にもちかけている。

やめてくれよ。
もう、オレはこれ以上アイツに関わる気なんてねぇんだよ……!!

***
動物化パラレルが好きで書いた話。
誰かの目線で書くのは難しいと痛感しました…



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