俺の隣は変なやつ


『ねぇトシ。』
「あ?」
『お昼一緒に食べよ!』
「無理。」
『即答!?いいじゃん!一緒に食べよーよ!あたしお弁当作ってきたんだから!』
「俺は近藤さん達と…」
「トシ、別に構わんぞ!
それにしても…明琉ちゃんの手料理かぁ…うらやましいなぁ!」
「…(空気読めよォォォ!!)」
『ホラ、近藤くんもそう言ってるし!ね?』
「……」




明琉がZ組に転入してきてから早いもので二年が経った。
コイツにはいつもいつも、振り回されてばかりだ。転入初日でいきなり告白してくるわ、翌日にはもうタックルかましてくるわ…こんな変な女、今まで会ったこともねェ。黙っていれば確実に可愛い部類に入るのに、アイツは性格が残念すぎてもったいないと俺は思う。



明琉は俺の分まで弁当を作ってくるようになったが…なんでそうなったんだっけか?あぁ…思い出した。あの時だ。

俺が一人で、マヨネ丼を食べていた時。いつものようにひっついてきた明琉の一言からだ。


『トシ、またマヨネーズつけてるの?体に悪いよ?』
「いいんだよ。」
『……あ!じゃああたしがお弁当作って来てあげる!』
「は?」
『だってそれじゃ体に悪いし…大丈夫!安心してね!私がとびっきり美味しいお弁当作ってあげるから!』
「……」



その時のアイツはスゲー楽しそうに笑っていて…いらないなんて言い出せなくなったっけか。


明琉が作ってきた弁当は文句なしに美味かったな。料理が得意だって言っていたのは本当だった。



『どう?美味しい?』
「……普通。」
『またまたぁ!ホントは美味しいくせに!』
「じゃあ聞くな!」




明琉はいつでも、笑っている。俺といる時なんかは特に、満面の笑顔で。





高校一年の冬。
あの日から、俺の横にはいつも明琉がいる。
俺の隣に明琉がいることが日常になっていた。慣れとは、なんて恐ろしいものなのか。常々思う。



『ねぇ、トシ?』
「…なんだよ。」
『好きだよ。』
「……っ!」
『あ、照れてる!』
「照れてねーよ!!目腐ってんのかお前は!」


明琉は毎日のように“好き”だと言ってくる。
ストレートに、なんの偽りもなく。ただ自分の気持ちを、飾り気のない言葉で。
ストレートすぎてこっちが恥ずかしいくらい、とにかく真っ直ぐだ。





『トシ?』
「あ?」
『帰り、一緒に帰ろう!』
「…はぁ。嫌だって言っても来るんだろ?」
『お!よくわかってるね!正解!』
「…勝手にしろ。」



四六時中引っ付いてくる明琉が最初はウザくて仕方なかった。
俺にいい寄ってくる女は腐るほどいて、でもどいつもこいつもマヨネ丼見たら一目散に逃げていく。結局女なんて、ただうわべだけしかみない奴だと思ってたが…明琉は違った。
俺のマヨネ丼見ても逃げなかった。


“そんな変な所も好きだよ!”



アイツはそう言って、やっぱり笑っていた。


明琉が作った弁当にマヨネーズぶっかけた時はさすがに怒られたが、それでも大抵のことは受け入れてくれた。



確かそれからだ。
俺が明琉に対して態度が変わったのは。


コイツなら……明琉ならいい友達になれる。


そう思えた。



俺は明琉はただのダチだと思ってる。それ以上でもそれ以下でもねェ…。ただの友達。
だが、アイツの笑顔を見る度にドキリと音を立てるのはなぜなのか。アイツが他の男と話してるのを見ると、不愉快になるのはなぜなのか。ここ最近のモヤモヤの原因は今だ不明のままだ。





次の日、明琉は正面から俺に飛びついてきた。


『トーシー!!』
「うわっ!!」
『おっはよー!』
「だから飛び付くなって何回言えばわかんだ!犬かお前は!!」
『犬も好きだけどトシが一番好きだから安心してね!』
「話噛み合ってねェし!」



人の話全然聞かねーなコイツ。



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土方目線。
この時点で土方も夢主のこと好きなんですがね(笑)
まだ気付いていない様子。
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