春のある日


暖かな陽射しが降り注ぎ、さわさわと優しい風が木々を撫で、無数の桜がふわりと空を舞う中。高校へと続く道を歩くたくさんの生徒達。彼らは皆、この先にある銀魂高校の生徒だ。



「トシおはよう!」
「おはようごぜェやす土方さん。」
「あぁ。」
「今日から三年生だなぁ!」
「そーだな。」



春休みも明け、今日から新学期。三年生になった土方達Z組生徒はクラス替えもなく、三年間ずっと同じ仲間とやってきた。



『トーシーー!!』
「ぐぉ!!」



風紀委員である近藤、沖田と並び、のんびる歩いていた土方に突然、なんの前触れもなく飛び掛かってきた少女。いったいどこから現れたのか…気配すら感じられず、土方はビビる。


銀魂高校の生徒である彼女は一年の冬にZ組に転入してきた。
その時に出会った土方に一目惚れして以来、彼女は毎日のようにアタックしてくるのだ。


「…ってめ明琉!あぶねーだろーが!!」


体制を崩した土方は危うくこける所だったが、なんとか踏ん張り、飛び付いて来た少女に怒鳴る。

少女の名前は雲仙明琉。
とても明るく、元気な子だ。
後ろでくくられた蒼い髪と、髪をまとめている赤いリボンがサラリと揺れる。



『トシおはよ!今日もかっこいーね!!』


土方の腰にしがみついて離れない明琉は抱き締める力をさらに強くする。



「苦しい苦しい!っ離れろォォォ!!」
『えー…わかった。』


渋々と言った様子で体を離す明琉は、土方の腰ではなく腕に変えただけでまたピッタリへばりついた。


「……はぁ…」


もう何を言っても無駄だと悟った土方は浅くため息をつく。


『幸せ逃げるよ?』
「誰のせいだよ!!」
「不幸になればいいのに。」
「んだとコラァァァ!!」



沖田の発言にキレた土方はあっかんべーと舌を出しながら逃げる沖田を追いかけ回す。あっという間に見えなくなった二人に、残念そうな顔をした明琉は残っていた近藤とのんびり歩く。




「早いもんだなぁ…」
『何が?』


近藤の呟きに、明琉は首を傾げた。


「明琉ちゃんが転入してきてからもう二年ちょっと経ったからさ。」
『あぁ…もうそんなになるんだ…』



明琉は昔を懐かしむかのように空色の瞳を細めた。



(あたしがトシを好きになって二年ちょっと、か…)




高校一年の冬。
明琉が銀魂高校に転入してきた日のことだ。



「おーい席着けー。」


銀八の一声でそれまで好き勝手やっていた生徒達はそろそろと着席した。静かになったところで、銀八は口を開く。



「えー転入生を紹介する。入れー。」



ガラリと戸が開き、入ってきたのは女の子。
青い髪をポニーテールにしていて、青空のように澄んだ空色の瞳をした可愛い子。それが明琉だ。



『雲仙明琉です!よろしくお願いします!』


ペコリと頭を下げ、ニッコリ笑う。人懐っこそうな明るい笑顔に、少なからず好印象を与えた。



「んじゃ、席は大串君の隣な。」
『はーい。で、大串君て誰よ?』
「敬語使おう?俺仮にも先生だからさ。大串君ってのはアレ。」
「先生、俺、大串じゃなくて土方です。それから人を指ささないで下さい。」


ガタッと席を立ち講義する土方。明琉は土方を見て、すぐに動かなくなった。


『……!』
「…おーい?雲仙ー?…明琉ちゃーん?」


銀八が声をかけるがそれでも動かない。ずっと土方を見つめたままだ。



『……』
「……?」


ようやく動いた明琉はまっすぐに土方に近付き。そして一言。


『好きです。』
「は?」
「「「え?」」」


土方も、銀八も、他生徒もびっくりして間抜けな声をあげた。
明琉は教室内の困惑した雰囲気なんか気にもせず、ニコッと笑い、もう一度言う。



『大串君!一目惚れしました!好きです!』
「「「「…えぇぇ!?」」」」



いきなりの告白に、たじろぐ土方、周りの生徒達。当の明琉はニコニコと満面の笑顔。



「いや…あの俺大串じゃねーから。」



土方は苦笑いをすることしか出来なかった。




それから、明琉は毎日土方に愛を告げるようになった。ところ構わず好きだと叫び、抱きつき。土方がどこにいてもすぐやってくるし土方を見かければすぐに飛び掛かる。まるで犬のように、嬉しそうに飛びついてくる。



毎日のように土方を追いかけて、それが常になった。日常と化してしまい、もう驚く者はいない。


『懐かしいね。』
「そうだなぁ。」
『…あ、神楽だ。おはよー!』



明琉は神楽を見つけると、手を振りながら駆けていった。
近藤は明琉の背中と今だ沖田を追いかけている土方を交互に見て、微笑ましそうに呟いた。



「一途だなぁ明琉ちゃんは。あ!お妙さァァァァん!!今日も美し「近寄るんじゃねェェェェ!!」ぐぼァァ!!」


断末魔が空に響き、空を舞う桜に交じって赤い何かが宙を舞った。






教室入り、席を確認した土方は隣から聞こえた声に愕然とした。


『あ、トシまた隣だね!』
「げ…!マジかよ!」
『やっぱりあたし達運命の赤い糸で結ばれてるんじゃ…!』
「んなわけあるか!お前はいい加減その頭なんとかしろ!」

『トシには見えない?ほら、あたしとトシの左手の薬指に赤い糸が…「ついてねェ!!





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前のがあまりにも酷かったので、大幅に修正しました。
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