いざ、遊園地へ(プール編2)
元々顔のいい男女の集まりなため、周りからの注目は当然だった。男も女も、揃ってチラ見。
土方はプールには入らず、神楽とはしゃいでいる明琉の姿をただぼんやり眺めていた。ちなみに妙は九兵衛と隅の方で談笑しながらのんびり浮いていて、沖田は山崎をからかい。プールに入っていないのは新八と、土方、そして今だ伸びている近藤だけだった。
「…それにしても…皆明琉ちゃん見てるなぁ…あの人気づいてんですかね。ねぇ土方さん?」
「知らねー。」
「……あ、そうっスか。(何?なんか怒ってんの?)」
「…チッ…」
「(ひぃい!)ぼ、僕も泳いでこようかな!土方さんは…」
「あ゙?」
「なんでもないですー!」
妙にイライラしている土方に、新八はすっかりビビり、慌ててプールに飛び込んで係員に怒られていた。
「…(なんでこんなイライラしてんだ。つーかなんで視線に気づかねーんだよ。)」
明琉を見るたくさんの男の視線が気に入らない様子。
むしゃくしゃして、やり場のない怒りを伸びている近藤にぶつける。
「……あ…」
ふと視線を明琉へ戻すと、隣にいた神楽の姿はなく、一人でプールサイドに座っていた。
チャイナはどこに行ったんだ?と首を傾げた時、一人になった明琉を狙ってか、男が二人、声をかけていた。遠巻きからでもわかるくらい、男二人はチャラチャラしていて、胡散臭い笑みで明琉の腕を掴む。明らかにナンパだ。困ったような顔になる明琉を見て、土方は我慢出来ずにスクッと立ち上がる。
「いいだろ?ほら、行こうぜ。」
『いや、あの…あたし連れがいるから…っ』
「じゃあ友達が来るまでならいい?」
『(しつこいなぁもうっ!)いえ、本当に結構ですから…っ』
「おい。」
「「え?」」
『……あ、トシ。』
「…お前ら俺の連れに何か用か?」
「んだよ連れって男かよ……」
「行こうぜ。」
罰が悪そうな顔で、男二人は姿を消した。
『……』
「…チャイナはどうしたんだよ。」
『お腹空いたから焼きそば買ってくるって。』
「…お前な、ちょっとは自覚しろ。」
『?何を?』
意味がわからない、と首を傾げる明琉に、土方はやれやれとため息をついた。
『助けてくれてありがとね!あの人達しつこかったから…困ってたんだ。』
「……別に。」
『ねぇ、トシは泳がないの?』
「あー…俺はい『暇なら一緒に遊ぼ!あたしスライダー行きたいんだ!』は?いやいいって…」
『いいからいいからー。』
土方の手を引き、スライダーへ向かう明琉。最初は渋っていた土方だが、神楽は当分帰って来なさそうだし、一人にしたらまたナンパされるだろうし。ということを考えると、一緒にいた方がいいのかもしれない。
『まずは一人でやろう。』
「まずは…ってまたやるつもりか?」
『当然!ほら、次トシの番だよ。』
「ちょ、これ急すぎじゃ……っ」
『早く行って!えい!』
「押すな…っうぁああああー!!」
明琉に押され、一気に滑っていく土方は、流される中で係員に注意されている声を聞いていた。
「…っ鼻が痛ェ…!」
『あー楽しいっ!次二人乗りやろー!』
土方に続いて一人で滑ってきた明琉は、先に終わっていたがまだ水から出ていなかった土方に激突した。土方は鼻と後頭部に痛みを覚えた。
『トシ前と後ろどっちがいい?』
「…どっちでも。」
『じゃあ前ね。あたし後ろ!』
順番が回ってくると、係員は優しく浮き輪を押し、いってらっしゃーいと手を振った。
『きゃー!速い速い!楽しー!』
「ちょ、は、速すぎじゃね…っうお!」
『わ、わ…っ!』
一瞬だけ何かにつまづいた浮き輪のせいで、二人の体はバランスをなくす。前にいた土方は、明琉が落ちそうになるのを見て咄嗟に手を引っ張り自分の腰に回した。
「掴まってろ。」
『…うん。』
笑顔な明琉が見えなくても想像できてしまい、ちょっぴり恥ずかしくなる。
スライダーは意外と長く、揺れも結構あった。
『あははは!』
「…っ(む、胸が当たってんだけど!!)」
土方に引っ付いているせいで、明琉の胸は土方の背中に当たる。柔けーな、なんて変態染みたことを考えてしまった自分が情けなくなった。
『あー楽しかった!意外と長かったねー!』
「…っそ、そうだな。」
無事に最後まで滑り終え、戻ってきた二人。土方は背中の感触が忘れられないのか、頬は赤く、明琉を直視できないでいた。
その後は皆でボール遊びをしたりと、3時になるまで遊び倒した。
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