女は怖い生き物だ


『きゃー!トシ頑張ってー!ファイトー!いっぱーつ!!』
「うるせーよ!つーかなんでいるんだ!あっちいけや!!」


体育館に響き渡る賑やかな声。
ボールの音…。
今日は銀魂高校の球技大会。
今のところ、Z組は負けなしだ。無敵である。



男子はバスケ。
女子はバレー。


明琉はずっと、土方だけを応援していた。バレーそっちのけで、土方に付きっきりだ。



『ト「明琉ちゃーん?」…はい?』
「テメェいつまでここにいるんだ?もうバレー始まるんだけど。」
『いだだだだ!い、行きます行きます!
ていうかあたしいなくてもいいんじゃ……』


妙に力いっぱい頭を掴まれ、涙目になる明琉。
心なしか、頭がミシミシいっている。


「つべこべ言わずにさっさと来いや!!」
『イ、ィィイエッサー!!』



妙に睨まれ、明琉はビシッと敬礼。そのまま、バレーのコートへ走って行った。


「はぁ…やっと静かになったか…」
「土方さーん、試合、もう終わりやしたぜ。」
「何ぃ!?」
「女子のバレーの試合、見に行くぞトシ、総悟!」
「へーい。」
「なんで…せっかくうるさいのがいなくなって清々したのに……」


ぶつくさ文句を言いながら、足は自然とバレーのコートへ向かっていた。


Z組の対戦相手はA組。
A組には、土方のファンクラブがあるらしく、なかなか過激なファンが多い。
土方にベッタリな明琉を、目の敵にしている人が多々いると、前に聞いた事がある。(しかし土方はファンクラブがあるとは知らない。)
現に、A組女子はわざと明琉だけを狙ってアタックを打っている。


前にいた女子が、力強いアタックを決めた。
そのボールは明琉の頭に直撃した。けっこうな衝撃に、うずくまる明琉。


「明琉ちゃん!」
「明琉!」
「大丈夫か?明琉。」
『ったぁ……』


痛そうに眉をしかめる明琉を心配そうに見つめる妙、神楽、九兵衛。
ボールを当てた張本人を見上げると、ニヤニヤと笑いながら明琉を見下ろしていた。


「あら…ごめんなさいね?」
「クスクス…トロくさいわねぇ。」
「ホント。弱くない?あたし達の相手にもなんないわ。」
「「「キャハハハッ!」」」



「あの野郎…!あれ絶対わざとだろ!」
「落ち着けトシ!」


憤る土方を近藤が押さえる。
明琉を見ると、妙に支えられながら、震えているのがわかった。


「明琉、大丈夫アルか?」
『………』
「…明琉ちゃん?」
『……かつく…』
「「え…?」」
『……ナメやがって……ムカつく……』

「…姐御…」
「……明琉ちゃんがキレたわ…」
「…あーあ……」



ユラリと立ち上がり、女を睨む明琉。
あまりの鋭さに、怯むA組女子。

「な、何よ…!」
『あたしに喧嘩売った事、後悔させてやらぁ!!神楽!ボール!』
「ほい!」



神楽から渡されたボールを、明琉は力いっぱい叩きつけた。


『うらァァァァ!!!』



ズシャアア!



体育館の床が、凹んだ。


「「「………」」」


A組女子は凹んだ床を見て、冷や汗を垂れ流した。


『まだまだぁ!オラァ!!』
「ちょ、ちょっと!アンタバレー部なの!?」
「何よこの重いボール!こんなの無理ィィィ!!」
『弱いのはどっちだよ、あ゙あ!?』
「「きゃー!ごめんなさいぃぃぃ!!」」





「うふ。優勝はいただきね。」
「ウン。」


明琉一人で、10以上ポイントを取っていた。もはやA組に勝ち目はない。


「……トシ。」
「……あ?」
「明琉ちゃんは、怒らせると怖いな…」
「…そーだな…」



男子軍は、ブチキレた明琉を見て、震え上がっていた。
普段、明琉はキレたりしない。こんな風にブチキレた明琉をみたのは初めてだったのだ。女子は前に一度だけ見たことがあるらしいが。




結局、球技大会はZ組の勝利で幕を降ろした。




無理矢理土方と一緒に帰る明琉は、大きく伸びをした。


『あー…疲れたぁ!』
「そりゃあんだけ暴れたらな、疲れるわ。」
『だってムカついたんだもーん。』
「お前なんかしたのか?」
『あの子達、トシのファンクラブに入ってるんだよ?知らないの?』
「はぁ!?俺のファンクラブ!?」
『そ。なんかね、あたしが気に入らないみたいだよ。ベタベタすんなって前はよく言われたもん。』
「な……マジか………」
『ちょっと、暗くならないでよ!あたしなら平気だから!しっかり返り討ちにしてやったから!』
「……あ、そ。」


土方は、グッと拳を握り、明るく笑う明琉の笑顔を見て、さっきのバレーの時の顔を思い出してしまい、ちょっと青ざめた。



『そうしたらね、もうなーんにも言われなくなったよ!でもやっぱり嫌われてるみたいだね。まぁいいんだけど。』
「………」



土方は呆れたように明琉を見た。



(たくましい奴。)




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土方のファンクラブメンバーはこの先も出てくる予定。
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