二人きりの勉強会(後編)


『…………』
「…………」



誰もいない教室で、静かに見つめ合う二人………
なんて素敵なシチュエーションではなく、ただ黙々と勉強をしている明琉と土方。
二人の間に会話はなく、ただカリカリというシャーペンの音が、広い教室に響くだけ。



『ねェトシ?』
「あ?」
『聞いてもいい?』
「…わからない問題でもあったのか?」
『うん。さっぱりわからない問題が一つ。』
「何だよ?」
『トシって童貞?』


ガターン!



突然の下ネタ?発言に土方は後ろにひっくりかえる。


「な、なななに言い出すんだテメェは!!」


すかさず起き上がった土方は、真っ赤な顔で怒鳴る。


『わからない問題を聞いただけじゃん。』
「なんの勉強してんだよ!そんな問題どこにあるんだ!!」
『保健の性教育について。問題はあたしの頭の中に。』
「そんなもん勉強しなくていい!完璧に私用じゃねーか!そもそも今回テストに保健はねェよ!!」
『まぁいいじゃない。で?トシは童貞?』
「……お前本当に女か?」
『失礼な!立派な女の子ですよーだ!ちゃんと胸あるもんね!なんなら触ってみる?特別に触らせてあげるよ。』
「バ、ババババカヤロー!!もう俺は帰る!」



土方は真っ赤な顔のままで席を立ち、帰る準備をする。
外を見れば、もう薄暗い。


時間経つの早いなぁ…もうちょっと一緒にいたかったんだけどな。と少し残念そうな顔をする明琉は、教科書やらを鞄に詰め、さっさと教室を出て行った土方を追いかけた。





「…着いてくんなよ。」
『もう暗いから、送って!』
「はぁ?無理。」
『酷い!あたしが襲われてもいいの!?トシの愛しの彼女が痴漢被害に遇ってもいいっていうの!?なんて薄情な彼氏…!』
「俺がいつお前の彼氏になったんだよ。」
『え?あたしの中ではもういろいろやってるんだけど……』
「…いろいろってなんだよ。」
『それ聞いちゃう!?やだもう……トシったらエッチー!恥ずかしいじゃない!』
「恥ずかしいのはお前の頭だ。俺を使って変な妄想すんなバカ野郎。」

『あ、ちょっと待ってよー!』


キャー!と、一人悶えていたら土方は呆れたようにため息をつき、明琉を置いて随分先へ行ってしまった。



『ねェ、やっぱりトシは童貞なの?』
「まだ言ってんのか!!」
『教えてくれてもいいじゃない!』
「誰が教えるかよ。」
『…わかった、じゃあトシは童貞の変態痴漢野郎だってみんなに言っとくね。
トシはあたしを使って毎日頭の中でいやらしい妄想をしてるド変態。あーあたし可哀相。
「それはお前だろーがァァァァァ!!ふざけんなよテメェ!」
『正直に教えてくれないトシが悪いんだよーだ。』



ベーッと舌を出し、土方をおちょくる。すっかり明琉のペースに乗せられる土方であった。




[ 8/13 ]
[*prev] [next#]