マイダーリン
ある日の朝食の時間。


「お、今日のメニューは和風かぁ。」


桃城の言う通り、今日の朝食は和風で焼き魚のいい香りが漂っていた。
そしておかずには、エリンギのバター炒めがついていて、美麗はそれを見るなりやったぁー!と喜んだ。

『さぁー…お待たせしましたエリンギちゃん!』
「早っ!お前もう食ったの!?」


まだ誰一人として食べ終わっていないのに、もうエリンギだけになった美麗のお皿を見て目を丸くさせる丸井。美麗はまぁね。と笑うと、エリンギをパクッと口にした。美味しー!と頬を緩ませながらエリンギをもぐもぐ。ゆっくり噛み締めながら食べていてもエリンギはあっという間にあと一つ。

これでラストかー…と残念そうだ。
エリンギをおはしでつまみ、口に運ぼうとした。が、つるっと滑り、エリンギがおはしから離れた。
あ。と思った時にはエリンギはベチョッと床に落下。

『あああああああ!!!』

美麗の絶叫が食堂にこだました。


『私のエリンギがァァァ!マイダーリンがァァァ!いやぁぁあああ!!』


錯乱する美麗。


『私のダーリンがぁ……うぅ…』
「美麗」
『…なに…』

跡部は自分の皿からエリンギを取ると、美麗のお皿に移した。
え?と目を見開く美麗はパッと跡部を見つめる。跡部は美麗の頭にポンと手を置き、やる。とだけ言った。

『…いいの?』
「あぁ。」

美麗は嬉しそうに顔を綻ばせた。
すると、前にいた赤也が先輩!俺のもあげます!とエリンギをお皿に移した。
俺のも!仕方ねーな。と次々とたまるエリンギ。

美麗のお皿にはテンコ盛りになったエリンギが。全員から貰ったエリンギ達を見つめ、美麗は皆を見渡し満面の笑顔で言った。


『ありがとう!』

そうして山盛りだったエリンギはたった数分で彼女の胃袋に収まった。美味しかったー!と満足げに笑う美麗はその日は終始ご機嫌だった。
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