ジュニア選抜【4】
手塚の歓迎パーティーが行われた翌日。華村班で試合が行われている中、跡部はラケットを持ってどこかへ行こうとしていた。
気付いた華村先生が声をかける。


「跡部くん、どこ行くの?」
「…トイレですよ、トイレ。」


それだけ言うと、スタスタと行ってしまった。華村先生はなんでトイレ行くのにラケットがいるの?と首を傾げる。

跡部は真っ直ぐに真田の元へ足を進めた。トイレなんて嘘なのだ。昨日の夜。跡部と真田は試合をする約束をしたため、それを実行するのだ。
テニスコートに向かい合い、試合を始めようとした。その時、「何やってるの!!」と華村先生の声が響いた。

ここまでくるのに、誰かに見られたらしい。噂を聞き付け、いつの間にか全員が集まっていた。試合を止めようとした華村先生を、榊監督が了承したため、急遽試合が行われた。

試合は跡部がリード、かと思ったが徐々に真田がリードしてきた。息一つ乱さず余裕そうな真田とは反対に跡部は少し息が上がっている。と、跡部が新技を繰り出した。見た事のないその打球に、真田を含め、皆がざわつく。


『景吾……いつの間にあんな技習得したんだろう…』


ここからが勝負所、という所で、止めがかかった。榊監督は二人にジュニア選抜メンバーに入れる事を決めた。跡部と真田は少し不満そうな顔をしながらも、「ありがとうございます」と御礼を言った。


選抜メンバーはあと五人。


竜崎班ではダブルスの練習試合が行われていたが組み合わせは少し変わっていた。大石、宍戸ペア対菊丸、鳳ペア。
最初は大石、宍戸ペアがリードしていた。だが、心から試合を楽しむ菊丸と大石を見て、途中から吹っ切れた様子の鳳はすっきりした顔になり、反撃を開始。そして見事、勝利をおさめた。


そうして、ジュニア選抜合宿は無事終了した。


「では、選抜メンバーを発表する!」


榊監督の一言で、辺りに緊張が走る。選抜メンバーは七人。
氷帝から跡部、忍足、立海から真田、切原、山吹から千石、青学から菊丸、不二。それから、補欠としてリョーマ。となった。


「試合の順、ダブルスのチームは後日連絡する。選手に選ばれたメンバーは試合当日までトレーニングを怠らずに万全の体調で望むように!以上、解散!」


帰りのバスの中。
美麗は跡部の隣の席で、ぐんと大きく伸びをした。


『やーっと終わったー。』
「お疲れ様です、美麗先輩。」
『長太郎もお疲れ様。』
「はい、ありがとうございます!」
「よし…学校に戻ったら練習の続きするぞ!」
「ウス。」
『え、まだやるの?』
「アーン?何言ってやがる、大会はもうすぐなんだ。休みはなしだ。」
「何やかんや言うても、それなりに身になった合宿やったな。」


跡部と美麗の後ろの席に座る忍足が呟いた。が、跡部は窓の外を見ながら「俺は不満だ」とぼやいた。


「真田と決着がつけられなかったからなぁ。」
『ねぇ、決着って何の決着?やっぱりテニスでの勝敗?』
「それもあるが………1番は美麗がどっちのものかっていう決着がつかなかった事のが大きいな。」
「まだ言っとったんかい。」
『いい加減にしないと殴るわよ?私はどっちのものでもないから。』
「真田の野郎、いとこだからっていい気になりやがって…こっちはな、幼少からずっと一緒の幼なじみなんだよ。」
『だから何よ?どうだっていいじゃない。』



おもちゃの取り合いをするガキかよ。と、美麗は心の中でため息をついた。


「…そんな事より、目の前にある試合に集中しやな、足元すくわれんで?」
「あぁ、わかってる。」


そして数日後、ジュニア選抜大会が開催され、おおいに盛り上がり、それは中学生にとって貴重な体験となった。


to be continued...


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