合同合宿【1】
ついに夏休みに突入した。
成績も返され、落ち込む人や喜ぶ人など様々な反応。そんな中、テニス部は休む暇なく全国に向けて今まで以上に練習に励んだ。
夏休みが始まってから三日が過ぎたある日、部室で帰る前のミーティングで、合宿のお知らせを受ける。


「来週の月曜から三泊四日の合宿を行う。」
「「「合宿?」」」
『氷帝だけで?』
「いや。何校か呼んである。今のところ参加校は青学、立海、不動峰、山吹だ。まだ増える可能性もあるが。」
「へぇ…おもろそうやな。」
『…私も行くの?』
「お前はマネージャーなんだから当然だろ。」
『…また私一人でやるの?あの仕事結構キツイのに。』
「あぁ、それなら安心しろ。青学から二人、不動峰から一人手伝いに来てくれるらしい。」
『それは助かる!で、場所は?』
「今考え中だ。候補は二つ。海に近い方か山に近い方か…お前、どっちがい『山!絶対山!!』…はぁ…言うと思ったぜ。わかった、山にしとく。」


目を輝かせる美麗に跡部はやはりな。とため息をついた。
なぜたがよくわからないメンバーは美麗に直接聞いてみる。


「美麗、なんで山なんだよ。」
『決まってるじゃない!山にはキノコがあるからよ!』
「「「………あぁ、なるほど。」」」


相変わらずキノコ馬鹿だな。と宍戸が呟いたが幸いにもそれは美麗には聞こえていなかった。

『楽しみー!…あ、ねぇ景吾、一日だけ私が練習メニュー組んでいい?いいよね。』
「……変なのじゃなけりゃいいぜ。」
『大丈夫!絶対みんなにとってもいい練習になるから!』


なんだか嫌な予感がする氷帝陣だったが、反論すればどんな目に合うか身を持って知っているため何も言わない。

参加校は氷帝、青学、立海、不動峰、山吹の他に聖ルドルフ、六角、そして大阪から四天宝寺の参加が決まった。
合計8校と決まった。


「わざわざ大阪からくるのかよ。」
「8校か…めちゃめちゃ多いやん。マネージャー四人で大丈夫か?」
「大丈夫だろ。美麗がいる。」
「美麗先輩、サボったりしませんか。」
「アイツはああ見えて責任感が強いんでな。やる事はしっかりやるぜ。心配いらねぇよ。」


そう言い、跡部が美麗に視線をやる。つられて視線を向けると美麗はすっかりやる気を失っていた。
跡部がそう言うんなら大丈夫だろうと思っていたが、そんな美麗を見てやっぱり心配になるレギュラー陣。それから時間は過ぎ、合宿当日を迎えた。
荷物を詰め込み、バスに乗ると跡部の別荘へと走り出した。


『まだ着かないの?』
「まだバスが出発してから30分も経ってねーぞ。そんなすぐに着くか。後一時間半はかかる。」
『一時間半もかけてどこ行くのよ。』
「都内だが結構遠いんだよ。」
『山、ホントに近いんでしょうね?』
「あぁ、すぐ横が山だ。」
『ふーん…まぁいいや、着いたら起こして。寝るから。』
「あぁ。」


そう言い美麗が跡部の肩にもたれて眠ったのを後ろの席の忍足が見てなんて羨ましい!と言い隣りの向日の背中をバシッと叩く。叩かれた向日はお返しにと頭をグーで殴る。


「いった!グーはないやろ!」
「やられたら倍返しにしてやれって美麗に教わったんだよ。」


勝ち誇った笑みを見せる向日。
忍足はそんなん俺は教わってへんで!とまた騒ぐ。
しまいにはうるせぇんだよテメーら!と跡部に怒鳴られる始末。
そしてその騒がしさに眠っていた美麗がうっすら目を開けた。
ギッ!と、きつく睨まれひぃっ!と竦み上がる跡部、忍足、向日はすみませんと謝る。
そしてバスの中は別荘に着くまで終始無言だった。


一時間半弱かけてバスは別荘に到着。寝ている美麗を起こし、バスを降りる。
氷帝以外はまだ来ていないようだ。改めて跡部の別荘を眺める。もう見慣れたはずなのに、やはりいつ見てもすごい。


「…すっげー…」
「でけーな。」
『無駄にデカすぎよ。こんなに広い別荘、誰が使うのよ。』
「ここは合宿や人を大勢呼ぶ時にしか使わねェ。」
『中は綺麗?』
「あぁ、もちろんだ。ちゃんと掃除させてるからな。」
『ふーん…………あ、来た。』


まず最初に来たのは立海だ。
バスを降りるなり赤也が美麗めがけてとっしん。
先輩ー!会いたかったっス!ギュッと引っ付き離れない赤也に、美麗は苦笑。
それから続々と参加校が集まった。青学、不動峰、山吹、聖ルドルフ、六角、四天宝寺。
全校が揃ったところで食堂に移動する。

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