いとこと過ごす夏
夕飯後、縁側でかき氷を食べる真田、美麗、翔、左助。
夏の生温い風が吹くと、風鈴が優しい音を奏でる。


「翔、左助くん。お風呂入ってらっしゃい。」


紗夜が二人をお風呂へ促す。
左助と翔はバタバタとお風呂場へ向かう。縁側には真田と美麗の二人だけ。
夏の夜空を見ながら、美麗が口を開く。


『やっぱりこの家落ち着くわ。』
「そうか…」
『ねぇ、今日久しぶりに一緒にお風呂入ろっか?』
「!!?な、ななな何を言うんだ!!入るわけないだろう!!」
『アッハハ!顔真っ赤!冗談に決まってんでしょ。ふふっ!』
「…くっ!」


ケラケラと笑う美麗を、真田は赤い顔のまま軽く睨む。


『立海は部活休みないの?』
「明日は休みだ。」
『ふーん。』
「氷帝は?」
『三日間だけ夏休みもらったの。明後日から部活よ。』
「そうか。」


ふ、と会話が途切れた時。


「こら左助!翔!濡れたまま走るんじゃない!」


バタバタと騒がしい音が響く。


「出てきたみたいだな。」
『一気に騒がしくなったわね。』
「美麗姉ー!」


とうっ!と左助が美麗に飛び付く。


『左助、まだ濡れてるじゃない。ダメよ、ちゃんと乾かさなきゃ。』


タオルで左助の髪を優しく乾かす。えへへ、と笑う左助を見て、美麗も微笑む。


「美麗ちゃん、先入っていいわよ。」


結稀が美麗に声をかける。


『はーい。じゃ、後は弦にやってもらってね。』
「えー?叔父さん乱暴だからやだー。」
「誰がおじさんだ!俺はまだそんな歳じゃない!」
「だって叔父さんじゃん!」
「弦兄おじさんなの?」
「翔…お前まで言うか!」



三人のやりとりを見て、美麗まで面白がって便乗する。


『後はよろしくねー、お・じ・さ・ん!』
「美麗ーー!!」



夜空に真田の怒鳴り声が響いた。


夜、部屋で寝ていた真田は、なんだか気配を感じて目を覚ます。なんだ?と思い、寝返りをうつ。


「……………」
『すー…すー…』


隣にはなぜか美麗がいた。
びっくりして、目をしばたたかせる真田はようやく状況を理解する。


「…み、みみ美麗!?なんでここにいるんだ!」

危うく叫びそうになったが、今は真夜中。なんとか声を抑えて、美麗の肩を揺らす。


『…んー……何よぉ…』
「なんでここにいるんだ!!」
『だってチビ二人の寝相が悪すぎて眠れないんだもの。』
「だからってなぜ俺の布団に潜り込むんだ!」
『いいじゃない、昔よく一緒に寝た仲なんだから。』
「しかしだな……お、俺達はもう昔とは違うんだ。」
『違うってどう違うのよ。』
「…あ、あの、それは……」


言いにくそうに淀む真田。
美麗はその間に、眠ってしまった。


「俺は男で、お前は女…………美麗?」


意を決して言葉を落とす真田だが、ぐっすり眠る美麗を見て、小さくため息をつく。


「……まぁ、いいか。」


諦めた真田も、眠りについた。



「見てみろよ理人、あの二人、昔とおんなじだぜ。」
「やっぱりいくつになっても可愛いなぁ。」


父親二人は仲良く眠る美麗達を見て、優しく笑っていた。



翌朝。いつも4時に起きる真田だったがこの日だけは、6時に起床。よほど気持ちがよかったのだろう。
その日は一日、美麗に付き合わされ神奈川を散策した。


to be continued...


あとがき→
prev * 68/208 * next