合同合宿【2】
「えっとなー!31番の人が26番の人の頭撫たってー!」


なんともかわいらしい命令だ。
指名された31番は美麗、26番は日吉だった。


『さぁー若!頭出せ。』
「その言い方嫌です。」
『いいからいいから。』


よしよしと日吉の頭を撫でる美麗。日吉が少し恥ずかしそうなのに対して、美麗はニコニコ嬉しそう。
次の王様は、跡部だ。


「美麗、ひざまずけ。」
『いやよ。ていうか名指しはダメってルールにあるだろーが。番号で言え。番号で!』


ルールを無視した跡部に美麗はすかさずツッコむ。
跡部はちっと舌打ちし、23番に物まねしろと命令した。23番は物まねが大得意の一氏ユウジだった。ユウジは意気揚々と物まねを披露。

次の王様は、桃城。


「よっしゃ!王様だぜ!18番に36番が告白しちゃって下さい!」

告白される側が跡部。告白する側が向日だった。


「跡部、あのな……実は…………跡部のお気に入りのマグカップ割ったの俺なんだ!ゴメン!」
「…え、告白って罪の告白!?」
「跡部ー、実は跡部が大事に取っておいた紅茶、俺が飲んじゃったC。ごめんね〜。」
「あー…実はな、跡部のジャージで床拭いたん、俺や。コーヒー零してしもて、近くにジャージしかなくてな…すまんな。」
『……アンタのあの高かったシャーペン折ったの、実は私。ゴメンね、つい魔がさして…』
「すんませーん、ここで懺悔するのはやめて下さい。」


いつの間にか懺悔室に変わっていた。このままほっとくといつまでも続きそうだったため、強制終了させた。
懺悔の対象、跡部は「最近やたら俺の周りの物が失くなっていくと思ったが……全部テメーらの仕業か……まぁいい。だが忍足、テメーのは許さねェ。」と静かに怒った。


次の王様は千石だ。


「おっ!ラッキーィ!俺が王様だよ。んー…じゃあ……20番の人が3番の人を抱きしめる!」


その命令に少し不満が漏れる。
男が男を抱きしめるなんて…と誰かが言うと、千石は女の子が当たるかもしれないよ〜と言う。しかし、その確率はかなり低い。


「20番誰かな?」
「………俺。」


すっと挙手した人物は、忍足謙也。周りは、どんまい。と苦笑した。


「お相手の3番は?」
『……………私だけど。』
「「「「なっ何ィ!?」」」」


美麗が千石を睨みながら言う。
その瞬間、謙也は周りから羨望の眼差しを受けた。
千石はびっくりした顔で「まさかホントに女の子が当たるとは…しかも美麗ちゃん…!うーん、うらやましい!」と嘆いた。
謙也と美麗は向かい合わせになる。美麗は照れる様子はないが、謙也はタジタジ。
周りはまだかまだかと二人をがん見。謙也は改めて美麗を見る。
…ホンマに綺麗やなぁ。謙也がぽーっと美麗を見ていたら、バチリと視線が合った。


「!」
『何?』
「え、あ、いや!えっと……その…」
『そういえば、あなた名前は?』
「え?」
『名前。』
「あ、あぁ…忍足謙也です。」
『…忍足?』


“忍足”という苗字を聞いた瞬間、美麗の眉がピクリと動いた。


「氷帝の忍足侑士とは従兄弟なんや。」
『従兄弟……へぇ。』
「言うとくけど、俺は侑士みたいな変態やないからな。」
『…うん、だろうね。』
「えっと、美麗ちゃんって呼んでもええか?」
『もちろん。』
「あ、俺の事は謙也でええから。」
『そう?じゃあそう呼ばせてもらうわね。』
「よろしゅう。」
『こちらこそ。忍足と違って真面目そうだし、変わってほしいくらいだわ。』
「…ハハ…」
「オーイ、俺達の事忘れてねーか?」
「お見合いしてるような雰囲気醸し出すのやめてくれる?それより、早く命令遂行してよ。」



千石がしびれをきらし、促す。
謙也がお、お見合い!?と真っ赤になるのを、美麗は笑ってからかったり、その後も王様ゲームは続きいろんな人が王様になり、盛り上がった。

そして、最後の王様になったのが美麗だった。
王様を引いた瞬間、ニヤリとほくそ笑んだ美麗に、跡部率いる氷帝+真田は嫌な予感がした。


『全員、私に平伏しなさい。王様に敬意を示せ。』


…無茶苦茶だこの人。

と、全員心の中で思った。
しかし跡部が心の底から嫌がったため仕方がないので命令変更。


『全員土下座。』
「さっきと対して変わらねーだろが!!」



たまらず怒鳴る跡部の額には青筋が浮かんでいる。


『文句言わない!今は私が王様なの。王様の命令は絶対でしょ?言う事聞きなさい。ほら、ダウン!』
「犬扱いすんじゃねー!!」



なかなか土下座しない跡部を見て、美麗ははぁ、とため息一つ。そして、また命令変更した。


『わかった。全員頭下げるだけでいいわ。それなら景吾でも出来るでしょう?』
「なんでそんなに頭下げさせたいんだよテメーは!」
『気分いいじゃない?』

「ドSめ!」
『いいからさっさと頭下げて!しっかり90度ね。』


男達が一人の女の子に90度に頭を下げる光景…なんとも異様である。当の美麗は満足そうに笑い、つかの間の優越感だった。

こうして、一日目の合宿は幕を閉じた。


to be continued...


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