合同合宿【1】
跡部に呼ばれ、前へ出るマネージャー達。
しかし、その中に美麗がいない。跡部は朋香に美麗はどうした。と訊ねた。


お姉様ですか?…それがさっきから姿が見えなくて…」
「……」


お姉様?



跡部を含めて全員が心中でそう思ったことだろう。
固まる跡部だがそんなのお構いなしで朋香は辺りをキョロキョロ。


「あ、いた!跡部さん、いましたよ。お姉様ァァァ!!」
「美麗!何してやがる、早く来い!」
『……ふん。』


なんだか機嫌が悪い様子だ。
前に出てきた美麗はムスッとしていて誰が見ても不機嫌だとわかる。


「あ、あの…先輩?どうかしたんですか?」


桜乃が怖ず怖ずと尋ねると、美麗はちょっとね…、と曖昧に返事をした。
その時、食堂の扉がバン!と開き、榊監督が入ってきた。
「げ…。」「まさか…美麗の機嫌が悪いのはコレか?」等と氷帝陣は焦る。事情を知らないその他の生徒は、どうしたんだろう、と首をひねるだけ。
榊監督は他には目もくれず美麗に近づく。
ある程度離れたところで立ち止まり、バッ、と両手を広げた。


「マイハニー!なぜ逃げる!照れる事はない!さぁ、私の胸にドーンと飛び込んでおいで!!」


決まった!とでもいいたげな表情の榊監督。
美麗は今すぐ殴りかかりたいのを必死で押さえ、力いっぱい否定する。


『だれが飛び込むかァァァ!!』
「フッ、相変わらずのツンデレめ。そんなところも可愛いぞ。美麗、心配せずとも、お前の愛はしっかり受け止める。遠慮せずに愛をくれ。」
『うっぜェェェェェ!!!』



あまりの気持ち悪さとウザさに我慢出来ず、とうとうキレた美麗は榊監督に飛びげりをお見舞いした。見事に決まった飛びげり。榊監督はぐふぁ!と奇声を発し、数メートル先まで吹っ飛んでいった。


「「「「「…………」」」」」
『いい加減にしろよコラ!何回言えばわかるのよ!私はアンタのハニーなんかじゃないしアンタを愛してるわけでもない!!思い込みも大概にしなさい!』



美麗は榊監督を踏み潰す。


『私がいつ照れた?アレが照れたように見えたの?お前の目は節穴か?』
「………」


榊監督の返事はない。
それもそのはず。先程吹っ飛んだ衝撃で気絶しているから。
美麗はそれを知っていながら足で踏み潰していたのだ。
動かない榊監督に、美麗は言いたい事だけ言い樺地に、つまみ出して。と言って戻ってきた。

何事もなかったかのように平然と元の位置に立つ美麗はあーすっきりした。とでも言っているような清々しい表情だった。


「少し邪魔が入ったが続ける。マネージャー、青学から自己紹介しろ。」
「すみませんいいですか」
「アーン?何だ白石。」
「今の何?」
「気にするな。」
「気にするわ!なんで自分とこの監督蹴り飛ばすん!?なんで氷帝は誰一人として監督助けへんねん!なんでマネージャー止めへんねん!?」
「なんでって…いつもの事だからだ。」
『そうね。最初はびっくりすると思うけど、時期に慣れるわよ。』



目が点になっている氷帝以外のテニス部に跡部は簡潔に説明をしてあげると何とも言えない空気が流れる。
落ち着いたところでマネージャーの自己紹介が始まった。


「青学一年、小坂田朋香です!よろしくお願いします!」
「青学一年の竜崎桜乃です。精一杯頑張りますので、よ、よろしくお願いします!」
「不動峰中二年の橘杏です。よろしく!」
『氷帝三年、雪比奈美麗。』
「…おい、それだけか?」
『他に言う事ある?』
「“よろしくお願いします”くらい言えよ!」
『嫌よ。』
「……山連れてかねーぞ。」
『よろしくお願いしまーす!』



“山に連れていかない”そう言われた美麗はコロッと態度を変えた。跡部はフッと笑い、扱いやすい奴だ。と小さく呟いた。
そして急に態度を変えた美麗に戸惑うテニス部達だった。


「それと、二日目の練習メニューはウチの美麗が組む事になってる。覚悟しときな。」
「なんでマネージャーが練習メニュー考えるんだよ!おかしいだろ!」


不動峰の神尾が不満を漏らす。
すると、美麗は神尾をギラッと睨んだ。


『何?文句あるの?』


そう言った美麗には威圧感があり、その鋭い睨みと、威圧的なオーラにすっかりビビった神尾は、「あ、ありません…」と小さくなった。


「言っとくが、美麗にはあまり逆らうなよ。下手すりゃ死ぬぜ。」
『失礼ね。そこまでやらないわよ。ま、三日は目覚まさないかもしれないけど。さっきのあれみたいになるだけ。』
「「「………」」」


それを聞いたみんなは先程の榊監督を思い出しサーッと青ざめていく。中には青ざめながらも信じていない人もいるが…のちに彼らはとんでもない目に合う。


to be continued...


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