自宅訪問
『何してんのよアンタ達。勉強しろよ。』
「いやアルバム見つけてよー!なぁ美麗!これ、この小さいの美麗?」
『そうだけど。』
「その隣は?」
『隣?………あぁ、それは弦ね。懐かしいわー。』
「真田!?」
「そういやいとこだって言ってたな。」
「先輩可愛いですね!」


向日達が眺める写真はいとこの真田と撮った写真。
笑顔の美麗と、同じく笑っている真田が仲良く手を繋いで写っていた。


「あ!跡部先輩がいますよ!ホラ!」


鳳が指さす写真は、幼なじみの跡部と撮った写真。


「へー…小せェ跡部か…初めて見たかも。」


小さな跡部と美麗。
写真には、カメラに向かってピースをする美麗と跡部が写っている。

「跡部がピース!めっずらしー!」
「やっぱり小さい頃は可愛いですねー。今とは全然違いますよ。どこをどう間違えたらあぁなったのか…不思議ですね。」
「……」

『ねぇ、勉強…「先輩、ここにはオカルト系の本はないんですか?」あるわけねーだろ!』
「チッ…」

『コラァァァ!聞こえてんだけど!!もうお前帰れ!!』
「冗談ですよ。」
『てゆーかアンタら勉強しに来たんじゃないの?何遊んでんの?』
「後でやるって!しっかし美麗ん家ってでかいよな!」
『そうかしら。』
「でもやっぱ跡部の家が1番でけーよな!」
「確かに。あれはもはや家じゃなくて城だからな。」
『そうね。あの大きさはありえないわ。』
「跡部さんに比べたら家は小さいし狭いですよ。」
『長太郎の家が小さいんなら私の家は犬小屋ね。』
「美麗の家が犬小屋なら俺の家はハムスターハウスだな…」


言ってからずーんと落ち込む美麗と宍戸は暗いオーラを背負い、項垂れる。


「…すっげー虚しい。」
『…金持ちなんかに負けずに頑張って生きて行こう。』
「…あぁ。」
『「金持ちなんかに負けねェ/ない!」』



グッと拳を固め、意気込む庶民代表二人。
メラメラと熱く燃える二人にどうしていいかわからないメンバーはただ立ち尽くす。


「…おい、誰か消化器持ってこい。」


跡部がそう言った時、ドアがガチャリと開いて、隙間から小さな美麗によく似た男の子が顔を出した。


「ねーちゃん、いる?」
『翔?』
「先輩の弟さんですか?」
『うん。翔って言うの。小学四年生。』
「あ!景吾兄ちゃん久しぶりー!」


跡部の姿を見つけた翔は嬉しそうに笑い、手を振る。


『で?何の用?』
「あのね、テレビ。見てもいい?」
『自分の部屋で見ればいいじゃない。』
「だってねーちゃんの部屋のテレビ地デジだろー?俺の部屋アナログだからさ。綺麗な方で見たいの!」
「つーかなんで美麗のだけ地デジなんだよ。」
『景吾に誕生日にプレゼントしてもらったの。』
「…誕生日プレゼントが地デジって…金持ちはやる事が違うな…羨ましいぜ。」
『毎回私の部屋に来るのやめてよね。アンタも地デジもらえば?』
「えー、いらない。だって、そしたらねーちゃんと一緒にいられないもん…」
『なに?なんて?』
「べっつにー!」


翔の小さな小さな呟きは美麗には聞こえなかった。


『まぁ、テレビくらいいいけど。何が見たいの?』
「あのね!ホントにあった怖い話!もうすぐ始まるんだ!」


嬉しそうにキラキラした瞳を美麗に向ける翔の口から出たタイトルに、周りの空気は凍った。美麗と向日至っては石化している。


「特集なんだ!早くしないと始ま『「ダメダメダメェェェ!!」』ひえ!?」


ガシッと美麗の肩を掴み、必死の形相でダメを連呼する美麗と向日の剣幕に当然、翔はビビる。
prev * 31/208 * next