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「#幼馴染」のBL小説を読む
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青春は続く
次のページは修学旅行。
ドイツへ行った時の写真だ。
クラスメイトとの集合写真に、仲良しグループの写真、ふざけあう男子生徒達、ホテルで枕投げをして遊ぶクラスメイトの男子に、巻き添えを食らい怒り狂う跡部、お風呂ではしゃぐジローに、おとなしくしろと止める宍戸、平居を始めとする同室の女子達と浴衣姿でピースをしている美麗、跡部と忍足から離れない美麗、宍戸、向日、ジローの姿。


「これ、もしかして迷子になった時のですか?」
「ああ、迷子になって以降はずっとこんな様子だったぜ。」
「普段自由に行動する美麗ちゃん達が俺らの側絶対離れやんくてなぁ…よっぽど怖い目に合ったんやろな。最後には半泣きでドイツは嫌いやって呟いとったわ。」
『「「「……」」」』


当時の様子を思い出したのか、おかしそうに笑う忍足と跡部とは正反対で、恥ずかしそうに目線をそらす美麗達。話を変えようと次のページを捲ると、学園祭の様子が並んでいる。
一年生の時のミスコン、二年生の時のミスコン、三年生の時のミスコン優勝者である美麗の豪華な衣装に、最終審査で相方に選んだ跡部とのツーショット、仁王にお姫様抱っこをされた時の写真まである。他にもクラスの出し物やステージ企画でのダンス、軽音楽部の演奏、吹奏楽の演奏、演劇部による劇、各部活の出し物の様子には執事服を着た跡部達とメイド服を着た美麗の集合写真。


「これはあかん!これは絶対保存しやな!こんな貴重な姿こそ永久保存や!」
『しなくていいったら!!』
「花魁姿、すっごく綺麗ですよね!これは僕も保存したいです。」
「五十川…!お前もそう思うか!?」
「はい!」
「仲間やな。」
「それは嫌です!」
「……素直すぎるんもどうかと思うわ。」
『一真はアンタみたいな考えで言ったんじゃないんだから同類にしちゃかわいそうよ。』


純粋で素直な五十川の発言に、忍足は肩を落とす。ある意味日吉よりも質が悪い。天然である鳳とダブルでこられたら立ち直る自信がないくらい、五十川は純粋だ。

またページを捲ると、今度は部活紹介一覧だ。文化部から始まっているそれは各部活の集合写真、練習風景、試合、コンクール風景、休憩時間や先輩後輩達と戯れたりじゃれ合う姿などが写っている。どの部活も楽しそうに、でも真剣な眼差しで取り組んでいて、見ていてとても楽しい。文化部が終わると運動部にかわり、野球部にサッカー部、ハンドボール部、バスケ部、バレー部、水泳部に剣道部、そしてテニス部という順番で並んでいた。テニス部は全国大会に出場し、さらにベスト8という好成績を残したからか、他の部活動より写真の数が多い。レギュラー+マネージャーのみの写真に準レギュラーだけの写真、平部員だけの写真にテニス部全員の集合写真。練習風景や跡部の必殺技を繰り出す瞬間の写真、休憩時間の一時に立海との練習試合の時の写真もあった。他にもマネージャーである美麗の写真が何枚かある。


「いつの間に撮ってたんだ?集合写真はわかるけどこの練習試合の写真は知らねーぞ。」
「カメラマンは神出鬼没やな。」
「ていうかこのレギュラーだけの集合写真、忍足さん悲惨なことになってますね。」
「なんでこれ採用したんやろ。ちゃんとしたやつ撮ったはずやのに…」


日吉が指さすその写真は、レギュラーとマネージャーのみが集まった集合写真。写真には飛び蹴りを食らった忍足が吹っ飛ぶ瞬間が写っており、美麗の顔は鬼そのもの。跡部や宍戸達も呆れたように肩をすくめていて、らしいといえばらしい一枚。


「なんかこうやってアルバム見てるとちょっと懐かしいよな。」


宍戸の呟きに、一同は黙り込み静寂がおりる。あまり変わらないメンバーのまま高等部に上がるが、中等部で体験した遠足や学園祭、部活動はもう二度と体験できない。過去には戻れないのだ。今、この瞬間も、一度きりのもの。二度目はない。そう考えると、少し感慨深いものである。


『お腹空いたからなんか食べに行かない?』


静寂を破った美麗の呑気な誘いに、全員が笑顔で頷いた。
ワイワイと盛り上がりながら部室を出て、日吉がしっかり鍵をかける。


部室の中に残されたアルバムの最後のページには、友人達からのメッセージと数枚の写真が貼られている。親友と二人で撮った写真と、卒業証書片手に笑い合う跡部、美麗、宍戸、忍足、向日、ジロー、滝。そして日吉、鳳、樺地のお馴染みメンバーが写った写真。弾けるような笑顔は、青空の下で輝く。


彼らの青春は、まだ始まったばかりだと感じさせるような、元気で明るい笑顔だった。



THE END...
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