ある日の1日 3
ようやく1日の授業が終わり、迎えた放課後。
復活した跡部が美麗に声をかけ並んで部室へと向かう。


『えーっと?洗濯にドリンク作り、ボール拾い………ちっ…めんどくさい。なによコレ…雑用じゃないの。なんで私がこんな事しなきゃならないのよ…!』
「つべこべ言わずにさっさとやれ。」
『わかってるわよ!』


汚れたタオルが入った籠を抱え、洗濯機へと向かう。


『あーめんどくさい。』


ポイっと汚れたタオルを洗濯機にほうり込み、洗剤を入れてスタートボタンを押す。


『よし、これでいいか!次は…ドリンク作りね。』


部室へ入り、ドリンクを作り始める。だが、ドリンクなんて作った事がない美麗は首を傾げる。


『どーやって作るんだろ?粉があるって事は…ボトルに入れればいいの?…もういいやテキトーで。』


テキトーな分量で全員分のドリンクを作ると、ボトルを籠に入れみんなのところへかけていく。


「オイ、休憩だ!」
「はー!疲れたー!」
『お疲れ様ミソ。
「なぁそれもしかしなくても俺の事?」
『うん。名前ミソでしょ?』
「違うから!岳人だから!!なんだよミソって!一文字も合ってねーじゃん!!」
『あはっ冗談よ。はい、ドリンク。』
「……サンキュー。」


全員にドリンクが行き渡り、ゴクリと一口。


「なかなか上手いじゃん。」
『え、ホント?』
「あぁ、平部員が作るのより大分上手いぜ?」
『よかった。テキトーに作ったから心配だったのよ。』
「「「……」」」
『ねぇ、私も飲みたい。』
「ん。」


跡部が自分が使っているドリンクボトルを美麗に手渡すと、ありがとう、とお礼を言いコクリと一口。
跡部が飲んだ後のドリンクを、躊躇う事なく口をつけた美麗にみんながびっくりしたように目を見開いた。


『……んー…普通ね。』


返ってきたドリンクを普通に受け取りこちらも躊躇いなく飲む。それは間違いなく、間接キスだった。間近で見たレギュラー陣は赤面しながらドリンクを吹いた。


「……か、かかか!!」
「落ち着いて下さい向日さん!!」
「ずるい!跡部ずるいで!!」
「……」
「…あれが普通なんだよ。アイツらは。」


休憩も終わり、練習再開。


『球拾いやだなぁ。』


嫌だと言いながらもボールを拾い集めていく。なかなか素早い動きで着実にボールはかごにおさまる。


『腰痛い……あだっ!!


ぐん、と伸びをしていたらゴン!と頭にボールがぶつかった。


『いったぁい!!』


頭をさすっていると、跡部が鼻で笑ってきた。


「そんなところに突っ立ってるからだ。」
謝れよ!!

美麗がテニスボールをすごい勢いで投げ付けるが跡部はひょいとかわす。


『むっきィィィィ!!』
「フン…バカめ。」
『このっこのォォォォ!!』


ボールをこれでもかってくらい投げ付けると何個かは跡部に当たり。これが戦いの幕開けだった。


「……っこの野郎…っ!!」


ボールの投げ合いが始まる。


「……何してんだアイツら。」
「ボール投げ合ってますね。」
「…毎日飽きねーな。激ダサだぜ。」
「二人とも落ち着き!な?」


見かねた忍足が宥めようとしたが、怒りの矛先を忍足へ向けた二人は鬼の形相でボールを投げた。


『「くたばれ変態ィィ!!」』
「いだっ!いだっ!ちょっ!なんで!?なんでなん!?」



「…練習すっか。」
「そうですね。ほっときましょう。」


跡部と美麗の争いは終わる事はなく、二人ともボロボロに汚れていた。ついでに巻き込まれた忍足は屍と化した。


「…慣れって怖い。」


向日が呟いた言葉は、二人の怒鳴り声にかき消された。


to be continued...


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