聖書の悩み
『お前そんな下らない悩みに私を呼びつけたの!?金返せ!東京から大阪までけっこう金かかるんだからね!!深刻だって言うからどんな辛い悩み抱えてんのかと思って心配してたのに、カブトムシの悩みだぁ!?ナメてんのかテメェはあ゙ぁ゙!?』
「な、ナメてへん!俺はめっちゃ真面目に……」
『黙れ!!大体なんで私に相談するのよ!そーいう事はカブトムシ専門家に相談しろ!私は虫が大っ嫌いなんだよ!!キモいんだよ!死ねコラァァァ!!』



白石の胸ぐらを掴み、殴りかかろうとする美麗。
怒りくるう美麗を後ろから謙也、銀が押さえる。


「ま、まぁまぁまぁまぁ!落ち着いて美麗ちゃん!な、な?」
「美麗はん、早まったらあかん!」
「殴りたくなる気持ちはわかりますけど。」
「まぁな。」



うがぁあああ!と叫ぶ美麗。
かなりご立腹の様子で、もう手がつけられない。


「千歳ェ!キノコや!大至急キノコを持ってこい!」


謙也が叫ぶ。


「そんな都合よくキノコがあるわけ…」


少し離れた場所で様子を見ていた一氏が呆れたように呟いたが。


「はいキノコ!」
「あるんかい!」



千歳は普通にキノコを持っていて、一氏はたまらず突っ込む。


「しめじやけどこれでよか?」
「でかした千歳!…ほら美麗ちゃん、しめじあげるで落ち着いてや!」


さっとしめじを見せる謙也。
すると、ピタリと美麗の動きが止まった。チラリとしめじを見て、冷たく言い放つ。


『私がそんなんで機嫌直ると思ってんの?バカにしないでよね。いただきます。』
「え、もらうん?」
「先輩、言っとることとやっとること矛盾してますよ。」



しめじをもらい、ちょっと怒りが収まった美麗は白石の上から退いた。しかしホッと一安心したのもつかの間。


「…なぁ、どうしたらええかな。このままじゃカブリエルが……っカブリエルがぁぁ!!」
『うるさい、黙れ。』



ゲシッと白石を蹴っ飛ばす。


『……蔵ノ介、そんなにカブトムシが好き?』
「…大好きや。」
『愛してる?』
「めっちゃ愛しとる。」
『ならいい方法があるわよ。』
「え!?何!?」


パッと顔を上げ、期待に満ちた眼差しを向けてくる。


『あのね、自分の手でカブトムシを殺すの。そんで、自分も後を追って死ぬ。』
「「「「「……」」」」」
「…!!」



開いた口が塞がらない、といった感じで口をあんぐり開けて固まる彼ら。しかし美麗はお構い無しに続ける。


『自分も死んで、カブトムシも死ぬ。そしたらあの世でもずっと一緒よ?ほらーいいじゃない。』
「……」
『カブトムシと離れたくないんでしょう?だったら死ねよ、今すぐに。』
「…そうやな。うん、それが一番ええやんな!おおきに美麗ちゃん!俺、死ぬわ!」
「あかぁぁぁああん!!白石早まったらあかん!」
「洗脳すんなや雪比奈!白石アホやからすぐ流されるんやで!」



うけけけ、と悪魔のように笑う#美麗。


「離せ謙也!カブリエルを殺して俺も死ぬんや!一生一緒なんやぁぁ!!」
「戻ってこい白石!カムバックプリーズ!」

『ケッ!虫なんてこの世から消え去ればいい。皆みんな消えてしまえ。ついでに虫を愛してるとかいう白石も消えればいい。いっそのこと全員消えちまえ。』
「誰かお医者さん呼んでェェ!この子危ない!危険!」


微妙に病んでる美麗に、ちょっと引いた。
そして数分後、なんとか白石を思い留まらせることに成功したのだった。
prev * 120/208 * next