体育祭【3】
『次何だっけ?』
「次は…二人三脚ですね。」
「俺達じゃん!日吉、行くぞー!」
「…足引っ張らないで下さいよ。」
「うるせー!」
『…大丈夫なのかしら、あの二人。』
言い合いながら、出場ゲートに向かう二人を、心配そうに見送る美麗。
「おい、俺達も行くぞ。」
『はいはいはい。』
「はいは一回だ!行儀が悪いぞ!」
『わかったから。いちいちうるさいわねもう!そんな事より、足引っ張らないでよ。』
「それはこっちの台詞だ!」
『フンッ!』
いがみ合ったまま、二人も出場ゲートに向かう。
「あの二人の方がよっぽど心配だよ。ホントに大丈夫かな…」
向日、日吉となんら変わらない二人に、滝は深いため息をついた。
出場ゲート前。
それぞれのペアが、足に紐を結び、準備は完了。黒組から、宍戸と鳳が出るようだ。
まず最初は跡部&美麗ペア。
「美麗、右からな。」
『はいはい。』
スタート位置につき、ピストルが鳴るのを待つ。
「位置について、よーい……ドン!」
パーン!とピストル音が鳴ると同時に、走り出す。好スタートを切る者もいれば、上手く息が会わずもつれる者もいた。
ちなみに、跡部と美麗は後者である。スタートと同時に足を出したのはいいのだが、出す足がバラバラ。案の定、もつれてスッ転んだ。
『ちょっと!何してんのよ!』
「おま、右からっつったろ!」
『だから右出したじゃない!』
「……俺は右、美麗は左を出せって言わなかったか?」
『聞いてねーよ!』
「チッ……つーか言わなくても普通わかるだろ!!」
『逆ギレ!?』
「いいから早く行けよォォォ!!」
スタート地点でずっと言い争う跡部と美麗に、たまらず向日が叫ぶ。
『「チッ……」』
揃って舌打ちすると、二人はスッと立ち上がった。しっかり肩を組み、一気に走り出し、ものすごいスピードで前にいたペアを蹴散らしていく。
『「おらおら!どけ愚民ども!!」』
息もピッタリだ。
さっきまで喧嘩していたとは思えないくらい、ピッタリ。
そのまま勢いに乗り、逆転一位。
『フン、チョロいわね。』
「楽勝だぜ。」
顔を見合わせ、ハイタッチを交わす。
次のペア、向日&日吉は、宍戸&鳳と接戦を繰り広げていた。
さすがダブルスペアなだけあって、宍戸と鳳は息もピッタリ。日吉と向日も、一度ダブルスを組んだだけであるがなかなか息は揃っている。
だが、あと少しなのに追い付けない、追い抜けない。
「クッソー!」
「……向日さん、ちょっと失礼します。」
「は…って…ええええ!?」
日吉は突然、向日を小脇に抱えた。
「「ええぇ!?」」
これには向日も、宍戸も鳳もびっくり。目を丸くさせて、日吉と向日を見た。
「ちょ、ひ、ひ、日吉!?おま、何して……!下ろせよ!」
「黙ってて下さいよ。」
向日を抱えたまま、日吉はゴールテープを切った。
「ちょ、え、こんなのありなのかよ!?」
「宍戸さん、なんなら俺が抱きましょうか?」
「だ…っ!?誤解するような言い方すんな!!」
その頃、赤組観覧席に戻る途中で向日は日吉に詰め寄っていた。
「クソクソ日吉!なんで抱えて走るんだよ!!なんか女みてーじゃん!」
「あーしないと勝てなかったからです。」
「だからって……!」
「向日さん軽いですよね。身長も低いし、もしかして本当は女なんじゃないですか?」
「ち…っ違うし!」
「どーだか。」
「…っ……ゆ、侑士ィィィィ!!日吉がいじめるぅぅ!」
たまたま近くにいた忍足に泣き付く向日。
「…なぁ岳人。なんで俺に泣き付くん。」
「侑士!日吉になんか言ってやれ!ナメんなよコラ!みたいに。」
「嫌や。」
「なんで!?」
「日吉最近美麗ちゃんに似てきたから。」
そう言い、チラと日吉を見る。
「…ハッ…情けないですね変態先輩。」
「ほらな!見てみぃあの笑い方!人を見下すような眼差し!美麗ちゃんそっくりやん!」
つーんと素っ気ない日吉に、なす術なし。
忍足と向日はこの体育祭で、どれだけ心が折れただろう。しくしくとすすり泣く二人は、それでも頑張って生きていく。
to be continued...
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