こっそりんぐ | ナノ



2012/01/16 23:13


「ぐぁぁぁぁ…!!」

さすがにWDCも3日目ともなると残っているデュエリストもレベルが上がる
それでも自分の敵ではない


「待てよ神代凌牙ぁ!!」

その場を去ろうとするのを先ほど自分に負かされた取り巻きの一人が口汚く呼び止めた
わざと聞こえるように舌打ちをした俺にその取り巻きは続けた

「お前全国大会で不正をした分際でWDCの決勝にいけると思ってんのかよ」

「…」

「言い返す言葉もないのか?とんだお笑い草だぜ!」

あの時からこんなことはよくあった、デュエルをするたびなにか嘘をついているようなそんな罪悪感があってこう言われるのにも慣れてしまった

「俺には目的がある、お前らみたいなのとは違ってな」

「なんだとテメェ!」

それ以上は聞く必要などない聞いたところでただの負け惜しみだ

俺は取り巻きを無視してその場を去った
後ろで激しく罵倒する声が聞こえたがそんなことはどうでもよかった

『シャークのデュエルはホンモノなんだ!』

自分を救った言葉が蘇る
この言葉でデュエルへの罪悪感のようなものは薄れつつあった
公園のベンチに座ってぼんやりと思い浮かぶ、今頃あいつは何をしているだろう

ただ一回デュエルをしただけなのに仲間だなんだと煩わしいと感じていたはずだった
そんな少しの繋がりに自分が救われたかと思うと今まで自分が”居場所”だと言った場所はなんだったのだろうと思うときもある

「うぉーシャークじゃんか!」

相変わらず元気なバカでかい声であいつ―九十九遊馬が大声で叫んだのが聞こえた

「あー…」

また俺を救おうと言うのか
できれば自分には関わってほしくない、目的のためにも遊馬自身のためにも巻き込みたくない
今まで救われた分だけで十分だった

「ちょっなんで逃げるんだよ!」
名前を呼ばれるなり逃げるように歩き出した俺に遊馬が叫んだ

「逃げてねぇよ。俺に関わるなっつってんだろ。」

以前のように鬼ごっこまがいなことをするのは勘弁したい
遊馬がしつこいのは分かりきっていることだ

「関わるなってなんだよ!俺たち仲間だろ!」

”仲間”
デュエルをすれば相手のことが分かる遊馬はそう言った

「知らねーよ。じゃあな。」

遊馬にとってデュエリストは全て仲間でありデュエルという絆で繋がったそういう存在だ
デュエリストはみんなそんな安直で生温い絆のなかに組み込まれている、そして自分も

だからこそ遊馬を自分の目的のために危険に晒すわけにいかなかった

「シャーク!…本当に復讐なんてするつもりなのか…」

俺の目的は復讐だ
自分のせいで大切な人が傷つき、掴みかけた栄光は手を離れ、人々から非難されるそんな日々を叩きつけられた
だがそれが全て仕組まれたことならば、復讐心が芽生えるのも仕方のないことだ

手段を選ばない相手なのだ、自分に関わったらどうなるかわからない

「…あぁ」

返事を短く答える
何故そんなことを聞くのか、そんな質問は聞かなくてもわかった

「復讐なんてやめろよ!デュエルは復讐の道具じゃねぇ!シャーク!お前だってわかってるだろ!?」

わかっていた、遊馬が自分を止めようとすることは
関わって欲しくなかったもうひとつの理由だ

「遊馬、お前に俺を止める権利はない。何を言われようと俺はWに復讐しなきゃならねぇ」

遊馬は太陽だと言った奴がいた
平等にそして半永久的に光輝く、そして暗い部分を照らして浄化しようとするそんな存在だと
自分がこのまま遊馬と関わっていたらこの復讐心はきっと風化してしまう、自分の心がそれを許さないのだ

「なんでわかってくれないんだ!」

「分からず屋はてめぇだろ!」

思わず声を荒げた俺に遊馬はビクリと肩を震わせた

「…もう関わってくるな。Wは手段を選ばない、だから俺はデュエルで正々堂々勝負するそれだけだ。」

遊馬は何も言わなかった


―――

なにこれ




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