あっちへこっちへ。彼はわたしの動きに合わせて付いてくる。授業が終われば隣の席にやってくるし、移動教室はもちろん、体育の日なんて女子更衣室の前でスタンバイ。さすがにトイレの中にまで入ってくることはないけれど、わたしが席を立てば彼も席を立つ。可愛いねと女の子たちは噂をする。可愛いね。その言葉で済むのは隼人だからであって、顔がよくなければ単なるストーカー止まりだと思う。彼氏だからとか、そういうのは関係ない。わたしだってプライベートな時間が欲しい。けれど、まあ、それでも許してしまうあたりわたしも末期である。

「動きにくいんだけど」
「そう?」

手料理が食べたいからと言って我が家にやって来た隼人は、さっきからずっと背中にひっついている。これじゃまともに料理もできやしない。ほら、お米がフライパンから溢れたじゃん勿体無い。

「味見したい」
「ピラフに味見も何もある?」
「そう言いながらさせてくれるとこ、好きだぜ」
「食べないならいただきまーす」
「オレにもくれよ」

スプーンで救ったピラフを口に運ぶ。もう一口とフライパンに手を伸ばした隼人の手をぺちんと叩き、出来上がったそれを皿によそる。オムライスとか作るべきだったか。いやでも今日はピラフの気分。もう一品、野菜スープを器に流し込んで、リビングへと料理を運んだ。コタツがあったかい。キッチンの床ですっかり冷えた足先がじんわりとした。

「どうしてそこ座る」
「あったかいから」
「コタツ入んなよ。そしてありがたく召し上がれ」
「大変だなまえ。そうしたいのは山々なんだが、両手が塞がってスプーンがもてねえ」
「そうだね離れればいい話だね」

足はコタツの中、背中には隼人がぴったりとくっついていて暖かいことは暖かいけどそういう問題じゃない。あーんと口を開ける。自分で食べなさい。そう言いながらピラフを掬って口に運んでしまうわたしは、本当に救い様のない奴だ。もぐもぐと咀嚼した隼人は、うまいと一言感想を述べて笑った。

「なまえは優しいな」
「甘いんだよ」

まさかスープまで飲ませろと言うんじゃないだろうな。けど、言われたら言われたでわたしはきっとそうしてしまうと思う。あばたもえくぼ。そんな姿さえ可愛らしいと思ってしまうわたしは、やっぱりどうしようもなく甘ったるい。



20140125
title by にやりさま
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