こうなることは最初から決まっていたのかもしれない、とか。出会った時から惹かれていた、とか。
多分とか、おそらくとか。
曖昧な言葉を用いるのは心持ちスッキリとしない性分だけれど、それもまた一つの答えなんじゃないかって思えるくらい、その展開と結末は予想だにしていなかったわけだ。人生何が起こるかはわからないのだから、いっそこの偏った考えは捨ててしまおう。そう思ってしまったのもまた一つの事実である。

高校生活三年目。受験、という言葉がちらほらと教師の口から聞かれるようになってくる時期。来月にもなれば担任や進路指導の先生に口うるさく「勉強をしろ」だの「進路を決めろ」だのと言われるようになる。さて、苦手科目の点数をあとどれくらい上げれば外野は満足するのだろうか。今からげっそりだ。
通学路を歩きながら欠伸を一つ。三年生はとっくに卒業したものの、来月から最高学年になるという実感は微塵も湧かない。しかしそんなものだろう。来たる春休みに思いを馳せているのは、何もわたしだけではないはずだ。

「今年もアレをやろうではないか!顔面シュークリーム!」
「アレは強烈だったな」
「やってもいいが…、去年は洗濯が大変だった」

たらたらと歩いていると、目の前に目立つ集団を発見した。道路を挟んだ向こう側を歩いていた女子生徒がチラチラと視線を投げていた、その理由に成る程と頷く。学年でも有名な顔ぶれ。そのうちの一人に名前を呼ばれ、わたしは軽く手を挙げた。

「おはよう自転車部」
「おはようなまえ!いい朝だな!」
「今日も早いな」
「ん、日直」

相も変わらず表情に乏しい福富にそう答えながら、わたしは鞄の中から一冊の単行本を取り出した。新開から借りていた有名どころの推理小説だ。「ありがとう、また騙された」以前と同じ感想を述べれば、新開はどこか嬉しそうに笑ってわたしの手から本を受け取った。
三月も後半に差し掛かったが、まだ肌寒い日が続いている。ビュウと吹いた風に身を縮こまらせていると、新開は、今し方事に気付いたような仕草で一つわたしに問い掛けた。

「おめさんはどうすんだ?靖友の誕生日、もうすぐだぜ。どうせ何も用意してないんだろうけど」
「む、想い人の誕生日だぞ?いくらなまえでもそこまで冷めてるハズがないだろう」
「はあ?」

何を言っているんだと考えたら、思わず強めの声が出てしまった。新開の質問はともかくとして、東堂くんの解釈はあまりにも理解し難いものだった。

「ねえ、わたしって荒北のこと好きだったの?」
「違うのか?」

福富まで、さも当たり前のように。どうやら本人の知らないところで、わたしは荒北が好きだということになっていたらしい。



20140401
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -