「わたしね、最近小さい頃の夢を見るの」

これは夢の中の話だ。意識の中の無意識が作り出した、あるいは希望なのかもしれない。小学生くらいの身体をしたわたしは、空と海の間に浮いていて、真下に広がる色とりどりの星を眺めている。星はチカチカと瞬き消えることはない。わたしは誰かと二人きり、ふわふわと浮遊しているのだ。その誰かの顔は見えるのだけど、夢から覚めたらすっかり忘れてしまっている。「ボクもあまり丈夫じゃないんだ」と言って儚く笑う、小学生くらいの男の子(もしかしたらあの子も、わたしと同じなのかもしれない、なんて)
夢の中の話だ。わたしたちの他には誰もいない。薄暗いけど眩しい、絵本のような空間をふたりぼっちで泳ぐ夢。

「ぼんやりとしか覚えてないんだけど、少しだけ真波くんに似てた気がするなぁ」
「ふーん」
「でも、真波くんは元気だから」

真波くんは元気だから、その子じゃないね。そう言おうとして、わたしは慌てて口を閉じた。これじゃまるで皮肉げだ。しかし真波くんは少しも気にした素振りを見せずに、わたしに問いかけた。

「なまえはその場所に行きたいのかい?」
「それは、」

夢を見た後は必ずあったかい気持ちになる。行きたくないといえば嘘になるけれど、夢の中の世界に、現実にあるかどうかもわからないような場所に、果たして行けるかどうかはまた別の話だ。

「連れて行ってあげるよ。なまえがこの世界に後悔を残さないようにするのも、オレの仕事だからね」

けれど、何故だろう。彼が言うのなら、夢のような話も現実になる。そんな気がした。

「ねえ死神さん、わたしいつになったら死んじゃうの?」
「なーいしょ」

冗談ぶって聞いてみれば、死神さんはわたしの頭を描き撫でて笑った。



20140218
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テーマ「人外ファンタジー」
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