簡単な謝罪を述べたメールを送信し、携帯電話を放り投げた。
痛い。痛い痛い痛い。内側にあるはずの子宮がぎゅうぎゅうと握りつぶされているような感覚。収まったかと思って立ち上がれば内側から体当たりを食らったみたいな激痛に襲われる。たらりと変な汗がこめかみを伝った。目の前がフラッシュ。こうしてベッドに横になっていたところで正直言って痛みの強度は変わらない。痛いものは痛い。この痛みがやって来るたびに思う。女になんて生まれるんじゃなかった。

インターホンが鳴った。ここのところしつこいあの新聞屋さんだったら是非とも早急にお引き取り願いたい。家主不在です。メーター回ってるからバレるだろうけど、すみません、気持ち的には今にも天に召されそうなのでそういうことに。
しかし律儀にインターホンを鳴らしたのは新聞屋のおばさんでも、ましてや宅急便のお兄さんでもなく。「げ、ここに鍵入れんなって何度言えばわかんだヨ!家ん中荒らされても文句言えねーだろバァカチャンがよォ」何やらぶつくさと一人文句を垂れながら、その人物は部屋の鍵を開けて入ってきた。随分と早いお出ましだ。暇人か。いや、わたしがドタキャンメール送ったから必然的に暇になってしまっただけだ。申し訳なさの極みである。
ガサガサとビニール袋を下げて上がり込んできた靖友は、布団を剥いでわたしの顔を覗き込んだ。

「痛い?」
「……いたい、」

呼んでもいないのにこうして世話を焼いてくれるあたりに優しさを感じる。ジーンと感動していると、顔のあたりに小さな箱が降ってきた。鼻に当たった。地味に痛い。

「ソレ痛み止め。湯たんぽ持ってきてやっからそーしてろ。ったく、腹冷やすんじゃねーぞ」
「いい、」
「あ?」
「靖友、ここいて」

片言で訴えると靖友は溜息をついた。怒られることは承知の上だったから、すんなりと膝上に招かれてみて驚かないわけがない。
湯たんぽの代わりに手のひらが下腹部に当てられる。少しだけ痛みが和らいだような気がしたが、なるほど、そうは問屋が卸さなかった。思い出したようにぎゅうとなる下腹部。わたしは声にならない声を発しながらもたれ掛かる。薬を飲めばいいのだと靖友は言う。いやだ。薬はあまり好きじゃない。

「もう本当に耐えられない」
「ンなこと言ったってこればっかりはどーにもしてやれねェし」
「どうにかして」
「無理だっつの」
「子宮取りたい解放されたい。いらない。使う予定ないもん」
「アー、そのうち使ってやっから大事にしとけ」
「そういうのいい」
「てめえ」

お腹の肉を摘ままれた。ちょっと待って二重で痛いから勘弁。

「てれび、」
「見る余裕あンなら寝てろバァカ」
「靖友ひまでしょ」
「別にィ?」

言葉とは裏腹に退屈そうな靖友は首筋に顔をうずめてきた。かぷりと肌を噛まれる。痛いなら気持ちいいことをしようって魂胆だろうか。それはそれで魅力的だが、女の子の日の痛みというのはそう安易に消失する代物ではない。

「やっぱりテレビつけよ」
「何で」
「そういうことされるとお腹きゅうってなるから余計痛い」
「へいへい」

お腹をさする手がいやらしく下に降りていくのも時間の問題かもしれない。それはそれで困ると思いながら、わたしはテレビの電源を入れた。



20140313
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