ハンバーガーよりポテトより三角チョコパイとティーセレクトより、正直店内のどの商品よりも欲しいものがある。プライスレスだなんてそんなこと言わず。その品をいただけるのならいくら払ったって構わない。500円?1000円?何を言うのだねワトソンくん!巻島くんのスマイルはそんな安価なお値段じゃ表わせないに決まってるじゃあるまいか!まあ見たことなんてたった一度もないんだけどね!

「スマイルください!!」

にこやかなスマイルでスマイルを注文。ほらほらスマイルひとつ入りましたよ。60秒間で出してくれないとハンバーガー無料券もらっちゃうんだから。

「断る」
「え、そんな選択肢ありなの?」
「オレの勝手っショ」
「東堂くんから教えてもらってわざわざ箱根から来たのに…」
「暇人だなおまえ」

15秒経過。呆れ顔いただきました。

「じゃあメアドおしえて?」
「東堂から聞けばいいショ」
「巻ちゃんは渡さんよ!って言って教えてくれない」
「たまにはいいことするなあいつ」
「巻島くんはわたしのなのに」
「おまえのものになった覚えはないっショ」

30秒経過。心底嫌そうな顔も素敵。

「店内でお召し上がりですか」
「巻島くんをテイクアウトで!」
「さっさと注文しろ」
「んー、じゃあシェイクのバニラ。エルサイズで」

45秒経過。出てきたバニラシェイクの容器を巻島くんの大きな手ごとロックユー。

「おい、離せって」
「スマイルくれたら離す!!」

55秒経過。わたしの誠意を前に諦めたらしい巻島くんは、溜息を一つ。

「…笑うなよ」

きっかり60秒後。
巻島くんが見せてくれた笑顔にズキュンと心臓を撃ち抜かれた。箱根から千葉までわざわざチャリで来た甲斐あり。写メるタイミングを完全に逃したことを心の中で東堂くんに謝りながら、巻島くん、とりあえずもう一度スマイルお願いします。
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -