大人で子供



「自分が自分であると認めている時に人はすなわち他者性を否定する排他的生物になっているはずなのに、それでも他者に愛されようとするのはこれ如何に」

「珍しく考え込んでると思えば、何をそんな論文のようなことを」

「これ如何に」

「・・・はぁ」


久しぶりに部活以外で真剣な顔をしていると思えば、雅治はどうやらとてもどうでも良いことを考えているらしかった。しかも、意地でも私からの返答が欲しい模様。

中二病か貴様、といってやりたいのは山々だが、流せばまた後々うるさいのだ。
図体だけ大きくて、中身はウチの弟と同レベルという彼氏もどうかと思うが、それがまたかわいいとか思ってしまう私のほうがどうかという感じだ。ちなみに弟は小学3年生である。

とりあえず、こんな彼には何かしらの回答を与えておくのが正しい判断と思える。


「・・・他者が居ないと自己も他者もないから。他者に認められない自己はもはや無であると同様で、そこでは自己を認めることは出来ないから」

「・・・堅い」

「雅治の質問も同じくらい堅苦しかったよ」

「・・むぅ」

「ま、バカが考え込むと碌なことないよね。ね、バカ治」

「ひどい」


と言いながら、雅治はぐりぐりと私の腹に頭を押し付けてきた。ぐえ、と呻いてしまうくらいには胃のあたりが苦しい。

離れてくれという思いを込めて、彼の銀髪を結構な力で引っ張ってみたが、更に捻りこまれてしまった。


「要するに、雅治は私がいないと立っていられないし、私は雅治がいないと息もできないっていうだけの話」

「!」


分かった?だったら離れて。でないとちょっとさっき食べたバームクーヘンがかなり際どい感じになってしまう。食道が焼ける。


「好きじゃ、憐」

「はいはい、いーからお腹から離れようね」

「すーきーじゃー!」

「ぐぇっ・・・!し、しぬふ・・・!」


ぐぃ、と更に深く頭突きをかまされ、本気で目の前が白くなったその直後、私は一体どこから現れたのか、いつも通りの王子様スマイルを携えた幸村に救出されるのであった。



(仁王は使えるようになった?)(おま・・、確信犯か!早く助けろし!)
(やだよ。仁王の精神安定剤は憐だろ?)(憐ー、愛しちょるよー)


大人で子供



 定期的に内部崩壊おこして、中二病チックになる仁王くん萌え。
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